2011 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子タギング法による糸状菌セルラーゼ遺伝子発現制御因子の同定とその機能解析
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11J10697
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
國武 絵美 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | cellobiose-and cellulose responsive induction / (ヘミ)セルラーゼ / 遺伝子発現制御 / cellobiose response regulator ClbR / Aspergillus aculeatus |
Research Abstract |
我々は多種のセルラーゼ系酵素を分泌するAspergillus aculeatusのセルラーゼ・ヘミセルラーゼ遺伝子の発現制御機構を解明することを目指している。これまでにT-DNAタギングを利用したスクリーニングによりFIII-avicelase遺伝子(cbhI)の発現を制御する新奇なZn(II)_2Cys_6型転写因子様タンパク質Cellulose response regulator ClbRを同定した。本研究はClbRの詳細な機能解析を進めることを目的とする。 1遺伝学的解析 clbR破壊株および高発現株の各種セルラーゼ遺伝子発現解析と酵素活性測定を行い,ClbRの制御下にある遺伝子を特定した。またClbRはセロビオース・セルロースシグナル特異的なセルラーゼ・ヘミセルラーゼ遺伝子誘導発現に関与していることを示した。 2ClbRのDNA結合様式の解析 ClbRとその制御下にあるcbhIプロモータとの結合を調べるため,大腸菌で発現させ,部分精製したMalE融合ClbRを用いてEMSAを行った。しかし特異的な結合は検出されなかった。ClbRは複数の遺伝子発現誘導経路を介したセルロース応答機構に関与し,他の転写因子と協調的に作用していることが遺伝学的解析より示唆されている。従ってClbRが単独ではDNAに結合出来ない可能性が考えられる。またClbRの活性化の必要性なども考えられるため今後はin vivo実験系で検証していく。 3ClbRの細胞内局在観察 C末端にGFPを融合したClbRを発現する株を作製・蛍光観察を行い,セルラーゼ誘導条件下で核に局在していることを明らかにした。 4新奇セルラーゼ遺伝子発現制御因子の探索 ClbRと同様に,T-DNA挿入による遺伝子破壊ライブラリからセルラーゼ遺伝子発現に関与する因子をスクリーニングし,新たに2株のセルラーゼ遺伝子発現制御因子欠損候補株を単離した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
clbR遺伝子破壊及び高発現実験,ClbRの細胞内局在解析は計画通り達成できた。一方,EMSAによるClbR-DNA結合解析についてはH23年度中に結論を得ることが出来なかった。しかし,clbRの遺伝学的解析よりClbRは他の転写因子と相互作用していることや間接的にセルラーゼ遺伝子の発現を制御していることが推測され,新たな可能性を見出すことが出来た。以上より,計画はおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画通りClbRの機能解析を継続し,セルラーゼ遺伝子発現制御機構の一端を解明する。ClbRの部分欠失変異株を用いたドメイン解析,ClbRの翻訳後修飾の解析を実施し,ClbRの活性化機構について検証する。H23年度中に明らかに出来なかったClbR-DNA結合特性はin vivo実験系であるクロマチン免疫沈降法により引き続き解析する。また今回得られた知見を活かし,既知の転写因子との相互作用や間接的なセルラーゼ遺伝子発現制御への関与についても検討する。加えて,引き続きT-DNAタギングを利用した新奇制御因子のスクリーニング及びH23年度に取得した候補株の解析を進め,更なるセルラーゼ遺伝子発現誘導に関与する因子の同定を目指す。
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