2012 Fiscal Year Annual Research Report
情報渋滞の観点からの読み書き困難の分析と支援-デジタルペンを用いた時系列解析-
Project/Area Number |
11J10701
|
Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
平林 ルミ 東京学芸大学, 教育学部, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 読み書き困難 / 書字行動評価 / 情報渋滞 / デジタルペン / 英語書字 / スクリプトフラグメント |
Research Abstract |
本研究は,子どもたちの連続的な読み書きの状態を行動レベルで捉えるために,「渋滞学」の観点から読み書き障害を捉えなおし,デジタルペンによる行動プロセスの解析によって読み書き困難への支援策を検討する。読み書きに困難を抱える子どもは中学生になると第二外国語の習得に困難を抱えるため、日本語だけでなく英語にも対応する評価方法および支援策を検討する。具体的には以下の3つの観点から研究を進めている。1)小学生および成人の書字行動の解析2)情報渋滞を引き起こしている事例の収集3)情報渋滞解消のための「情報の制限」方略の検討 本年度は,英国のサウサンプトン大学コンピューターサイエンス部門(University of Southampton, Electronics and Computer Science)に1年間滞在し,書字行動の分析アプリケーションの開発を行った。これまでの分析アプリケーションでは原稿用紙のような枠を用いて書字ストロークを1文字と判定していたが,この方法では漢字の篇旁の分析に対応できないこと筆記体での書字が一般的でかつ個人ごとの書き方のばらつきが大きい英語書字に関しての分析が困難なことから,ストロークを分割し,タグ付けられる分析アプリケーション(Script Fragment)を開発し,日本語と英語双方の分析に対応可能となった。 また,英国のディスレクシアを専門とする小・中一貫校に在籍する読み書きに困難のある80名の児童・生徒およびサウサンプトン大学でEnabling Services(日本では障害学生支援室)のDyslexia Support(読み書き困難支援部門)からサポートを受けている大学生25名とコントロール群としての大学生25名を対象として英語の書字行動のデータ取得を行った(観点1・2)。 さらに,サポートを受けていた大学生に対しては,読み書き困難の事態把握と大学進学までの経緯および実際に活用している学習補償手段・方略に関するインタビューを行った(観点3)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
英語書字の分析プログラムを作成するのに時間を要したため,英国で取得したデータの分析および聴写の分析がやや遅れている。また,英国での書字データ取得に関して,大学生のディスレクシア群とコントロール群,ディスレクシアを専門とする学校でのディスレクシア群のデータ取得は完了しているが,学校との日程調整に時間を要したことから通常の小・中学校でのコントロール群のデータが未取得となっているため,次年度追加で行う必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度開発した書字分析プログラムを用いて,これまで取得したデータ(日本・英国の通常学級児・生徒・大学生,読み書き困難児童・生徒・大学生)の分析を進め,学会発表・論文投稿を行うことで,まとめていく。さらに,読み書きに困難を持つ子どもたちの書字プロセスのパターンを分類し,その分類とインタビューや事例研究から得られた具体的支援策を結びつけ,読み書き困難の具体的支援となる「情報の渋滞を補償する情報制限」に関するガイドラインを作成する。
|