2012 Fiscal Year Annual Research Report
プロセス科学に基づくLSI絶縁膜の最適化に関する研究
Project/Area Number |
11J10745
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
永田 晃基 明治大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | SiO2薄膜 / 微小角入射X線回折 / プラズマ酸化 / 半導体集積回路 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、LSI半導体プロセスに用いられる絶縁膜の評価および解析を行った。前年度まではLSIのゲート絶縁膜として用いられるSiO2とSi基板との界面構造に注目して研究を行ってきたが、本年度はSiO2薄膜自体の巨視的・微視的な構造と電気特性のプロセス依存性に重点を置き、評価を行った。特に、一般的に用いられている熱酸化法とプラズマ酸化法の比較により検討を行った。このような試料に対して電流一電圧特性および電気容量・電圧特性を評価した結果、プラズマSiO2薄膜は電気耐圧に優れ、大きな蓄積容量を有していることが確認され、概ね膜密度との相関が存在していることが判明した。更に、プラズマ酸化条件を変化させた場合には同程度の密度であっても電気特性が異なるという現象も確認されたことからSiO2薄膜中の結晶様構造および短距離秩序性に着目した。結晶様構造の同定の為に放射光施設であるSPring-8の高輝度放射光を用いた。これは、結晶様の構造が形成されている可能性が高いとはいえ、Si結晶の様な完全整列した結晶質ではなく、その秩序性の低さから非常に回折強度が弱いことと、SiO2薄膜の厚さが5~10nm1前後と回折に寄与する体積が非常に小さいことを補うためである。本装置を用い、微小角入射X線回折法(GIXD)手法を適用した。GIXDの特徴として、入射角度を変化させることで、物質へのX線侵入深さを制御可能である。X線侵入深さは物質の臨界角近傍で急峻に変化することを利用し、Si基板からの信号を抑制しつつSiO2薄膜全体の構造評価を行うために、入射角度をSiの臨界角以下である0.175°に決定した。In-plane測定配置で面内回折を観測し、測定範囲は2θ=9~35°とし3つの異なる方位方向に対して測定を行った。その結果、熱酸化SiO2薄膜においてブロードな非晶質ピークと共に回折角が17.6°の位置に鋭い回折ピークが観測された。これらの成果はこれまで不明確であったSiO2薄膜中の結晶様構造の存在を示唆するものであり、酸化メカニズムや薄膜特性の決定要因の解明に寄与出来るものと言える。今後更なる進展により極めて理想的なSiO2薄膜の実現が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画ではプロセス科学の確立に際して絶縁膜1半導体界面に重点を置いていたが、昨年度までに一定の成果を挙げることが出来たため、本年度では薄膜自体にまで評価対象を広げ、従来まで不明確であったSiO2薄膜中の博造を明らかにした。更に、電気特性評価にも着手しこれまでの評価結果を裏付けることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針としてSiO2薄膜中の構造評価についてはこれまで通り実施するが、評価対象を広げると共に測定条件の最適化を実施する。また、本年度の結果より酸化手法の差異が構造に与える影響を把握できたため、短距離秩序性を評価することも検討している。技術的な課題として散乱強度の補償が考えられるが、大型試料の導入と測定条件の最適化により対応可能と考えている。
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