2011 Fiscal Year Annual Research Report
生きた動物個体内の特定の細胞でのみ機能を発揮する新規機能性生物発光プローブの開発
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11J10826
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小嶋 良輔 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 生物発光 / luciferin / 機能性分子 / BRET / 近赤外 |
Research Abstract |
生物発光は、分析法における検出原理として広く用いられているが、その基質の改変は、基質の発光特性の喪失しやすさ故に殆ど行われて来なかった。そこでまずは、どのような形であれば、基質の発光特性を維持したまま、発光基質に機能性分子を結合できるか検討を行った。報告されているfirefly luciferaseの結晶構造を元にドッキングシミュレーションを行うと、発光部位であるaminoluciferin(AL)と機能性分子の間のリンカーの構造が特に重要になることが予想されたため、様々なAL誘導体を開発してその構造と発光量の相関を取ることで、論理的な基質設計が可能になるかを検討した。結果、ドッキングシミュレーションの結果を矛盾なく説明できる実験結果が得られ、リンカーの構造を最適化することで、様々な機能性分子を生物発光基質に結合可能であることが示された。 続いて、上記の設計法に関する知見を元に、in vivoでの近赤外生物発光イメージングを可能とする新規近赤外生物発光基質を開発した。種々の近赤外蛍光団を機能性分子として導入し、その発光特性を精査すると、確立した設計法から予想されたように、すべての基質が近赤外発光を示し、その発光波長を自由にチューニングすることができた。特に、最も発光波長が長いもので、最大発光波長がおよそ800nmに達した。これはこれまでに報告されている発光基質に比べて、100nm以上長波長化しており、特筆すべき結果となった。 しかしながら、これらの近赤外発光基質をluciferaseを発現した生細胞内に導入すると、その細胞膜透過性の低さから、近赤外発光は観測できなかった。そこで、蛍光団に修飾を施し、基質に細胞膜透過性を付与し、さらに発光基質の細胞内局在と、luciferaseの細胞内局在を一致させることを試みた。結果、生細胞内からも近赤外生物発光を観測することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規機能性分子の設計法を確立し、実際にその有用性を示すことができる、in vivoで利用可能な新規機能性発光基質を開発できたが、これは研究開始当初想定した研究計画に沿っており、おおむね順調に研究が進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
機能性分子として、まだ近赤外蛍光団しか用いていないので、より様々な機能を発揮する光機能性分子を生体深部で機能させることを試みたい。問題点としては、機能性ルシフェリンの基質消費速度が遅いことと、細胞内デリバリーに難がある点である。今後はこの点を基質を、また場合によってはluciferaseも改良することで改善していきたい。
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