2011 Fiscal Year Annual Research Report
船舶ブロック組立時における高精度変形予測システムの開発とその応用
Project/Area Number |
11J10855
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
生島 一樹 大阪府立大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 理想化陽解法FEM / 固有ひずみ / 熱弾塑性解析 / 溶接変形計測 / 画像照合性 / GPU / 溶接残留応力予測 / 溶接変形予測 |
Research Abstract |
溶接変形に関する研究は、これまで多くの研究者により行われてきており、それを数値計算により算出する技術は既に確立していると言える。しかし、その解析規模は溶接継手レベルの場合がほとんどで、船体大型ブロックのように数十~数百メートルもあるような巨大構造物を解析対象とする事例はほとんど無いのが現状である。この理由としては、例えば商用FEM解析ソフトを用いて溶接の変形・応力解析を行う際に良く用いられる静的陰解法FEMにおいては、大規模な連立程式を構築・求解する必要があるため、メモリ消費量および計算時間が膨大となる点が挙げられる。 また、溶接変形の解析においては、溶接現象が溶接トーチから大量の熱を局所に集中して投入するため、材料が局部的に溶融し、非常に強い非線形性を示す。このような強非線形現象を正確に解析するためには熱弾塑性理論を用いた詳細な解析を行う必要があるため、溶接変形の解析は、通常の構造解析と比較し、より計算時間、メモリ消費量が増大するといった問題がある。本研究では、この点を克服するために、動的陽解法FEMをベースとした解析手法に注目し、申請者らが開発した"理想化陽解法FEM"を採用する点に特徴がある。この手法を用いることで、商用静的陰解法FEMでは溶接変形解析が事実上不可能な1億自由度以上の超大規模構造の解析をPCクラスタなどの大規模な計算設備を用いずにStand-Alone PC上で実現することを目的としている。 本年度は、理想化陽解法FEMの更なる大規模化・高速化に注目し、解析アルゴリズムの開発を行った。特に、近年、高速な並列数値計算環境として注目されつつあるGPU(Graphics Processing Unit)と呼ばれる画像処理用の処理装置を用いた並列計算手法に着目し、解析アルゴリズムを開発することで、解析手法の大幅な高速化を達成した。また、開発手法を多層溶接の残留応力解析に適用することで、開発手法が従来手法では困難であった大規模多層溶接の残留応力解析に適用可能であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は溶接残留応力・変形解析手法に注目し,これまで提案してきた理想化陽解法FEMに対して,GPUを用いた並列計算アルゴリズムを開発することで,大幅な大規模化,並びに高速化を達成した.これにより,従来では予測が困難であった大規模多層溶接継手の残留応力予測が可能となる等,研究を大きく前進させることができたことから,今年度は当初の計画よりも研究を進めることができたと考えている,
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、船体大型ブロック溶接組立時における溶接変形予測システムを開発することである。これを実現するためには、大規模な構造物における任意の溶接条件を持つ溶接継手の残留応力、残留変形を高精度に予測することが必要である。本研究ではこれまでに、理想化陽解法FEMを開発することで、解析手法の大規模化を実現している。今年度以降は、解析の高精度化するために、様々な溶接継手において実験との比較を行うことで、解析精度の更なる向上を図る。また、実験に際しては、これまで開発してきたデジタルカメラを用いた画像処理による変形計測手法を、構造全体の溶接変形、及び、ひずみを計測可能な手法へと拡張する。これらの研究を通して、高精度かつ高速、大規模な溶接変形予測手法を構築し、上記の目的を達成する。
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