2012 Fiscal Year Annual Research Report
細胞質ダイニンが一方向性を獲得するための要因の決定
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11J10857
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鳥澤 嵩征 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ダイニン / 分子モーター / 細胞骨格 |
Research Abstract |
前年度においては,細胞質ダイニンが一方向に運動を開始するためにはモーター分子に対して働く負荷の存在が重要な役割を果たしていることが明らかとされた.この結果を受け,24年度においては負荷によってダイニン分子にどのような影響が及ぼされているのかを調べるため,光ピンセットを用いて様々な溶液条件において,負荷がかかった際のダイニン分子の微小管からの破断現象を観察した.その結果,負荷の存在によってダイニン分子のATP加水分解サイクルにおけるリン酸の放出が加速してされている可能性が示唆された.また,電子顕微鏡を用いた観察によって,無負荷状態の細胞質ダイニンは2つのモータードメインが重なりあった構造をとっており,さらにこれはリン酸状態に特異的な構造であることも明らかとなった.上記の結果から,ダイニンは無負荷状態ではATP加水分解サイクル中のリン酸状態にトラップされるような形になっているため一方向に連続的に運動することができず,負荷が作用することでリン酸状態から脱出してサイクルの回転が促進されるために一方向への運動が現出するという形で,"負荷による一方向性の現出"という描像をより具体的にすることができた.これは,哺乳類の細胞質ダイニンのメカニズムおよび先行研究における細胞内・細胞外での観察結果の乖離という問題に対しても大きな理解の前進をもたらす結果であると言える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
細胞質ダイニンの運動様式の変化という事象に関して整合的な描像を組み立てることができ,雑誌論文への投稿準備という段階まで到達することができ,"細胞質ダイニンが一方向性を獲得するための要因の決定"という研究課題に対して,課題年度内における解決の見通しを立てることができたため.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた一分子運動観察,光ピンセット,電顕による構造解析などの結果をさらに精緻化すると共に,確立したモデルに基づいた計算機シミュレーションも援用することで,得られたモデルの妥当性をさらに強固なものとしていく.
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