2013 Fiscal Year Annual Research Report
心臓のストレス応答における脂肪酸代謝の意義と機能についての網羅的解析
Project/Area Number |
11J10879
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Research Institution | Keio University |
Research Fellow |
遠藤 仁 慶應義塾大学, 医学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | マクロファージ / ω-3脂肪酸 / 心臓リモデリング / 脂質メディエーター / 脂質メタボローム解析 |
Research Abstract |
ω-3脂肪酸は、古くから疫学調査で心血管保護作用が示唆されており、すでにいくつもの大規模臨床試験がおこなわれ、症候性慢性心不全の予後改善や心筋梗塞の二次予防効果が確認されている。しかし、その機構については依然不明な点が多く、私はこのω-3脂肪酸が有する心血管保護効果の分子機構の解明を目的に研究を開始した。 遺伝学的にω-3脂肪酸が体内に豊富に存在するω-3脂肪酸変換酵素fat-1の遺伝子改変マウス(fat-1 Tg)を用いて、大動脈縮窄による心肥大・心不全モデルを作成した。心肥大についてfat-1 Tgマウスは野生型マウスと比し有意な差は見られなかったが、術後4週で野生型マウスが心収縮能の低下を示したのに対し、fat-1 Tgマウスの心機能は維持されていた。また、間質の線維化およびマクロファージの浸潤がfat-1マウスでは野生型に比し顕著に軽減していた。fat-1 Tgマウスの骨髄を野生型マウスに移植したキメラを作成し、その上で大動脈縮窄心肥大を誘導したところ、fat-1 Tgマゥスと同様の肥大刺激に対する強い抵抗性を示した。マクロファージの培養上清で心臓線維芽細胞を刺激する実験から、fat-1 Tgマクロファージが炎症を抑制する脂肪酸代謝物を産生していることが示唆された。LC-MS/MSを用いた脂肪酸代謝物の網羅的測定(リピドミクス解析)を行ない、fat-1 Tgマクロファージが18-HEPEというEPAの一次酸化物を積極的に産生していることが明らかになった。この脂肪酸酸化物は容量依存性にnMレベルの低用量で心臓線維芽細胞の起炎反応を抑制し、大動脈縮窄後の心不全マウスに投与することで心機能、心線維化、炎症細胞浸潤のそれぞれを抑えることができた。ヒトにおいてもEPA内服下で血漿中に有意に18-HEPEが増加していることもあきらかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
(抄録なし)
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Research Products
(3 results)