2011 Fiscal Year Annual Research Report
視細胞前駆細胞の移動・分化におけるCD73とアデノシンの役割の研究
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11J10952
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 晴奈 東京大学, 医科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 網膜 / CD73 / アデノシン / 眼 |
Research Abstract |
(1)発達過程の網膜におけるアデノシン受容体の発現 発達段階の網膜での発現が不明だったアデノシンA3受容体についても、mRNAレベルでの発現が確認された。その後アデノシン受容体A1、A2b受容体に焦点を当ててその蛋白の局在を調べた。両受容体共に網膜神経前駆細胞ではほとんど発現されていなかったが、胎児網膜<生後1週目の網膜<成熟した網膜、の順に発現は上がっていることが観察され、mRNAの発現と相関した結果となった。アデノシンA1受容体は哺乳3日以降の網膜において幅広くほぼ全種の細胞の細胞膜での発現が観察された一方で、アデノシンA2b受容体においては、Ganglion細胞とアマクリン細胞の一部でのみ強い発現が見られ、視細胞での発現は観察されず、受容体のサブタイプ別に網膜での発現部位が異なることが示された。 (2)発達過程の網膜においてアデノシン受容体を活性化させた場合の影響 哺乳3日齢のマウスより摘出した網膜にアデノシンを付加し約2週間培養すると、コントロールの網膜に比べて、視神経の細胞体の局在する外核層(ONL)が薄くなり、アポトーシスを起こしている細胞がONLにおいて多くなることが観察された。一方で、層構造や細胞種特異的なマーカーの発現への顕著な変化は見られなかった。続いてアデノシンA1受容体特異的にAgonistとして作用するとされるCCPAを付加すると、網膜全体におけるONLの比率が上昇し、INLが相対的に薄くなるという、アデノシンとは異なる影響が見られた。培養13日の段階では、顕著なアポトーシスの増加は見らず、アデノシンにより見られた視細胞への毒性はアデノシンA1受容体を介したものでは無いと今のところ考えられる。現在上記のアデノシンとCCPAについて異なる培養時間でその影響を調べているが、今のところ培養下1日目では、いずれについても特に目立った影響は観察されていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画に組み込まれていな網膜におけるアデノシン受容体の発現は順調に進んだ。これに続いて現在網膜培養系を用いての解析を進めている。この培養系を用いた実験により、アデノシン受容体、特にA1受容体が網膜の分化・または生存に関わる可能性が示唆される結果が得られたのは、当初の予測した結果の範囲内であり、良い結果であるといえる。一方で、In Vitroでの網膜培養系の手技的な難しさ等のため、網膜培養系を用いたアデノシン受容体の機能解析の進展の早さに限界があり、当初の計画以上の速さで進展しているとはいえないため、 (2)のおおむね順調、という評価になった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き研究課題にそってアデノシン受容体の網膜での役割を機能的に解析してゆく。現在使用している網膜組織培養の実験系を異なる発生時期の網膜を使用したり、異なる培養時間を用いることで、アデノシン受容体の時期特異的な役割を解析する。特に蛋白レベルでの発現がわかっておりサブタイプ特異的な薬剤があるアデノシンA1受容体に焦点を当てて検証を続けたい。また、研究課題に含まれている、CD73との関連性についてもIn Vitroの培養系を用いて次年度に着手する予定である。
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Research Products
(2 results)