2011 Fiscal Year Annual Research Report
ケミカルバイオロジーを用いたγセクレターゼモジュレーターの分子機構に関する解析
Project/Area Number |
11J10966
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹尾 浩史 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | アルツハイマー病 / γセクレターゼ / アミロイドβ / モジュレーター / 光親和性標識 |
Research Abstract |
フェニルイミダゾール型γセクレターゼモジュレーター(GSM)の作用機序を明らかにするため、以下の研究を実施した。 1 in vitro再構成系を用いたGSM薬理作用の解析:GSMの一種であるST1120が酵素反応に直接作用しているかを明らかにするため、in vitroγセクレターゼ再構成系を用いた検討を行った。γセクレターゼ複合体の最小構成因子であるPresenilin(PS)1/Nicastrin(Nct)/Aph-laL/Pen-2を発現・精製し、界面活性剤存在下で基質と反応させたところ、ST1120がin vitro再構成系においても薬効を示すことを確認した。すなわち、ST1120は酵素反応に直接作用することを明らかにした。 2 光親和性標識を用いGSM標的分子の同定:本学天然物合成化学教室(福山透教授)との共同研究により作出した新しい光プローブST2038が薬効を保持することを確認した。このプローブをマウス脳画分に添加し、UVにより標識したところ、内因性のPS1 NTFとAph-1aLが特異的な標識を受けることを発見した。既知の阻害剤等でAph-1と結合するものは報告されておらず、γセクレターゼの活性制御機構について新たな可能性を示唆するものである。 3 GSMによる活性制御機構の解明:フェニルイミダゾール型GSMの分子機構について、(A)変異体タンパク質の化合物感受性解析、(B)光親和性標識を用いた既知の化合物との競合実験、(C)酵母を用いたケミカルジェネティクス、により解析を進めた。そしてGSMが活性中心サブユニットの違い(PS1もしくはPS2)に応じて薬効を発揮すること、またGSMが酵素の活性中心部位及び基質結合部位の構造を変化させることを明らかとした。今後さらにその分子機構の詳細を解析するため、Aph-1を完全に消失したAph-1ノックアウトマウス由来線維芽細胞でのγセクレターゼ活性測定系の確立(ジョンズホプキンス大学・Philip Wong教授との共同研究)や、酵母におけるγセクレターゼ再構成系(東京大学大学院総合分化研究科・石浦章一教授との共同研究)の検討を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
結合分子として初期的検討では検出できていなかったAph-1を新たな標的分子として同定し、GSMによる活性制御機構について新たなメカニズムを提示することができたため。また、結合残基の同定についても引き続き実験系の検討を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は光親和性標識とランダム変異による結合残基の同定を遂行し、同定した残基の変異体解析によって確認していく研究を完成させる予定である。酵母では化合物感受性がやや低いという問題点があるため、感受性を高める工夫をすると共に、別の培養細胞を用いて同様の解析を行うことも検討する予定である。また、結合残基の同定に留まらず、分子機構の解明をめざして構造変化や酵素-基質相互作用について定量的な解析も行っていくことを予定している。
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Research Products
(4 results)