2012 Fiscal Year Annual Research Report
切断プロファイリング解析によるカスパーゼ依存シグナル伝達ネットワーク機構の解明
Project/Area Number |
11J10973
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
清水 康平 愛媛大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | カスパーゼ / アポトーシス / プロテインカイネース / シグナル伝達 / 筋分化 / TRB3 / Nek5 |
Research Abstract |
本研究は、カスパーゼにより惹起されるシグナル伝達機構の総体を明らかにすることを目的とし、昨年度までにカスパーゼ3、6、7の基質プロテインキナーゼ(PK)を新規に延べ66種類同定することに成功した。 本研究の目的に則り、昨年度に続き、カスパーゼ3の新規基質として同定されたTRB3について、アポトーシスの過程における役割を解析した。その結果、小胞体ストレス条件下において、TRB3はプロカスパーゼ3の核移行を媒介することによりアポトーシスに対して抑制的に作用することを見出した。一方で、TRB3のカスパーゼ依存的な切断がアポトーシスの促進に寄与することから、TRB3は自身の切断を介して細胞の生存と死のスイッチングに関与している可能性が示唆された。小胞体ストレスにおけるこのスイッチング機構の詳細は明らかとされていなかったが、今回の結果により、TRB3が重要な分子の一つである可能性が示された。 上記のように、カスパーゼの活性化とそれに伴う基質切断は、主としてアポトーシスの実行に関与することが報告されてきたが、近年、細胞分化におけるシグナル伝達制御の重要な因子としても認識されつつある。そこで、本研究では骨格筋分化をモデル系とし、分化誘導時にカスパーゼ3の活性化が観測されているマウス筋芽細胞株・C2C12を利用して、カスパーゼ3の基質PKが筋分化に与える影響について検討した。筋分化後期のマーカーであるミオシン重鎖(MHC)の発現量を評価したところ、本研究で同定した基質PKの中から、Nek5及びPctaire1の一過的過剰発現によりMHCの増加が認められ、これらのPKは筋分化に対して促進的に働くことが示唆された。さらに、Nek5は筋分化誘導依存的にカスパーゼ3により切断されることが明らかとなった。現在、筋分化過程においてNek5が切断される意義について詳細な解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目以降に計画していた同定した基質の個別解析に関して、カスパーゼ3の基質キナーゼが筋分化の促進に寄与することが明らかとなり、筋分化過程における基質切断の意義も明らかになりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で同定した基質がアポトーシスあるいは細胞分化の過程で切断される意義について検討を行う。また、骨格筋分化の初期に観測されるカスパーゼ3の一過的な活性化は分化の推進にとって必須のシグナルであることが報告されてきたが、既存のFRETプローブを用いた解析をモデルとし、本研究で作製したカスパーゼ8あるいはカスパーゼ6,8の活性化を検出するFRETプローブを用いて、骨格筋分化過程におけるカスパーゼ活性化の詳細な時空間解析を行う。
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