2011 Fiscal Year Annual Research Report
腎薬物トランスポーターの寄与率に基づいた薬物間相互作用の定量的予測法の開発
Project/Area Number |
11J10986
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Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
伊藤 澄人 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | MATE / 薬物間相互作用 / 尿細管分泌 / 有機カチオン輸送系 / プローブ基質/阻害剤 / 定量的予測 |
Research Abstract |
本研究では、カチオン性医薬品の尿細管分泌メカニズムに焦点を当て、ヒトにおけるMATE蛋白の重要性をさらに定量的に実証すること、多種のカチオン性薬物について検討することで、MATE蛋白の重要性を一般化するとともに排出側輸送機構に働くトランスポーターの多様性を解明することを目的とする。マウスにpyrimethamine(PYR)をプレ投与し相互作用試験を行った結果、MATE蛋白により排泄される薬物群を明らかにした。Cimetidineの包括的な阻害実験を行った結果、臨床投与量ではOCT2を阻害するほど高濃度にはならず、MATE阻害の可能性が示唆された。マウスを用いてMATE基質とcimetidineの相互作用試験を行ったところ、MATE基質の腎臓内蓄積がみられ、取り込み側ではなく排泄側の阻害であるこが明らかとなった。従来からカチオン輸送系の評価に用いられているN-methylnicotinamide(NMN)について、臨床投与量のPYRはBBMVへのH^+勾配依存的な輸送を完全に阻害するが、腎スライスへの取り込みには影響を与えないことを明らかとした。PYRを投与した臨床検体を用いてNMNの腎クリアランスを測定したところ、PYR投与群では尿細管分泌がほぼ完全に消失し、MATEのプローブ基質としてmetforminよりも優れていることを実証した。 医薬品の排泄過程に働くトランスポーター分子を明らかにすることで、薬物間相互作用や遺伝的要因によるトランスポーターの機能変動により生じる体内動態の個人間変動、さらに薬剤応答性の個人間変動を明らかにすることができると考えられる。本研究により、医薬品および内因性化合物の尿細管分泌過程におけるMATE蛋白の重要性を示すとともに、取り込み側だけでなく排泄側トランスポーターの寄与率に基づいた定量的な薬物間相互作用予測法を開発することを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Mate1によって尿細管分泌を受けるカチオン性医薬品を同定したことおよびcimetidineによる薬物間相互作用がMATEに起因するものもあるということを実証し、MATE蛋白の重要性を一般化し、また、NMNが内因性のプローブ基質となることを臨床サンプルを用いて実証することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
種々のカチオン性医薬品についてBBMVを用いた輸送実験を行い、H^+交換輸送系に占めるMATE蛋白の寄与率を評価する。PYRによる阻害効果が認められない場合には、他の腎に発現するトランスポーター(P-gp、BCRP、MRP4、OCTN1)の強制発現系やノックアウトマウス、阻害剤を用いた試験を行い、医薬品排泄過程に働くトランスポーター分子を明らかにする。OCT2、MATE蛋白の絶対定量法を確立し、それぞれのタンパク強制発現系やヒト腎臓における発現量および輸送活性と尿細管分泌固有クリアランスを比較することによって、トランスポータータンパクの絶対量に基づいたより正確なscaling factorが算出し、in vitroからin vivoへのより精度の高い予測法を確立する。
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Research Products
(8 results)