2012 Fiscal Year Annual Research Report
難民申請とセクシュアリティに関する比較社会学的研究
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11J11024
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
工藤 晴子 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 難民 / 難民認定申請 / セクシュアリティ / セクシュアル・マイノリティ / ゲイ、レズビアン / ナラティヴ / アメリカ |
Research Abstract |
本研究の目的はセクシュアル・マイノリティの難民問題から、難民認定審査手続き、受入国のセクシュアリティの秩序と当事者のセクシュアリティ再構成の関係を明らかにすることである。2012年度は11月末から1月上旬までカリフォルニア大学バークリー校エスニック・スタディーズ研究科に研究拠点を置きながら、ベイエリアにて、難民支援団体での参与観察とインタビュー調査を行い、セクシュアル・マイノリティ難民支援のディスコースと難民ナラティヴの関係を調べた。その結果支援団体の実践と言説の影響を受けて当事者が、人権、人道主義的ディスコースに拠らずに、難民申請を既存の移民政策の中でのひとつの選択肢と捉える傾向があるなど、もうひとつの調査地ニューヨークとの比較で際立った違いをつかむことに成功した。2011年度まで行ってきた調査のデータと比較し、地域的な違いがより明確に発見され、難民ナラティヴに影響するのは社会のセクシュアリティの秩序のほかに、支援団体側の言説だという点がより明確に確認できた点に、2012年度の研究の意義と重要性があるといえる。 また、10月にフィリピン・マニラのアテネオ・デ・マニラ大学で開催されたアジア太平洋社会学会大会にて研究報告を行った。ここではD.Richardsonに代表される「セクシュアル・シチズンシップ」の、難民ナラティヴに見られる「シチズンシップ」に対しての分析概念としての妥当性について英語で発表した。オーディエンスからはさまざまな質問とコメントを得て、特にポストコロニアルな分析視点について考察を深める重要な機会となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究成果の発表、フィールド調査の準備と実施、調査結果の分析が達成されたため、概ね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2011年度に比較対象のフィールドを変更し、2012年度もその計画に沿って研究を遂行したところ、セクシュアリティの再構成に深く関わる難民ナラティヴに影響するものとして、当事者の属するコミュニティや入国から申請までの経験、支援団体の方針があることがより明確になった。よって、今後も同様の方策で研究を進める。また、2013年度は研究成果を論文としてまとめることに重点を置いて調査と研究発表を行う。
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Research Products
(1 results)