2012 Fiscal Year Annual Research Report
骨芽細胞内RANKL挙動制御機構に着目した、骨破壊疾患に対する新規創薬標的の探索
Project/Area Number |
11J11038
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
青木 重樹 東京大学, 医学部附属病院, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | RANKL / リバースシグナル / 骨芽細胞 / mTOR / PRM / 骨形成 / カップリング |
Research Abstract |
当研究室における先行研究から、RANKLの細胞内局在は主としてリソソームであることを見出しており、また、リソソームに蓄積されたRANKLは、細胞外からのRANK刺激依存的に細胞表面に放出され、破骨を促進させることを示唆する結果も報告していた。前年度の研究から、骨芽細胞にRANKによる刺激を与え、タンパク質のリン酸化を指標にRANKLリバースシグナル(逆シグナル)の存在を明らかとした。さらなる検討から、RANKLの骨芽細胞内挙動にはmTORC2が関与していることが明らかとなってきたが、RANKによる刺激を与えることで同時にmTORC1の活性化が認められ、本年度はそれが骨芽細胞の活性化、骨形成の促進に影響を与えているのではないかと仮説を立て、検討を行った。その結果、RANK-RANKL相互作用を介して骨芽細胞の活性化が起こることを見出した。さらに、活性化した破骨細胞からRANKを含む膜小胞であるエクソソームの分泌が亢進されることを発見し、また、この破骨細胞由来のRANKを含有するエクソソームは顕著な骨形成活性、骨再生能を有しており、それはRANKL逆シグナルを介して生じることが示唆された。また、RANKL逆シグナル入力にはRANKLの細胞内ドメインに存在する疎水性に富んだProlinerichmotif(PRM)が関与することもPRMの点変異ノックインマウスを用いた解析から示唆されており、RANKL分子を介した大きな骨芽細胞内シグナルネットワークが存在することが明らかとなってきた。 当初はRANKLの細胞内挙動を制御する医薬品候補化合物の探索を行うことを想定していたが、骨吸収制御薬より骨形成促進薬の開発の方が遅れている現状も鑑み、その点に焦点を当てた研究を遂行した。本研究結果を基盤として、今後、RANKL逆シグナルを介した骨形成促進薬の開発が進められていくことが十分に期待できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RANK刺激に伴って、骨芽細胞内でRANKLを起点としたリバースシグナル(逆シグナル)が発生することを明らかとし、その下流で骨形成が促進することを見出した。また、成熟破骨細胞から分泌されるRANK含有エクソソームに骨芽細胞活性化能、骨形成促進能を見出した。実際にRANKL逆シグナルを介した骨形成促進薬の探索まで着手すべきであったが、そのために必要となる基盤の研究は遂行できたと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究から、骨芽細胞のRANKL分子を介した骨芽細胞の活性化効果、骨形成促進効果といりた新たな生命現象力1発見された。現在、ビスボスホネート製剤を含む骨吸収を抑制する薬剤の開発は多く行われてきているが、骨形成促進薬の開発は十分ではない。今後、細胞外からRANKL分子を起点とした骨芽細胞内シグナルを発生させるような低分子化合物、抗体等をスクリーニングすることで、有用な骨形成促進薬の開発が望めると考える。また、本研究でRANKLの細胞内に点変異を有するRANKL逆シグナル低下マウスの作出も行ったことから、本マウスを使用することでより効率的にRANKL逆シグナルを活用した創薬研究が遂行できるのではないかと考える。
|