2011 Fiscal Year Annual Research Report
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11J11044
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Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
高山 大毅 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 徂徠学 / 水戸学 / 江戸儒学 |
Research Abstract |
本研究の目標は、明治の「御一新」以前から、既に文人社会に大きな転換が見られることを多角的な視点から明らかにすることである。今年度は、北九州及び京都の文人社会の変遷について、寛政期以前に遡り、検討した。 (1)古文辞派の詩文と文人の交流の関係について分析した。 亀井南冥・昭陽父子に代表されるように、北九州の文人社会は徂徠学から強い影響を受けている。そこで、古文辞派の詩風と文人の交流の関係を明らかにするために、祖練の明詩注釈である『絶句解』を分析した。これによって彼らの交流が「趣向」中心の詩文を媒体としていることが明らかになった。『絶句解』は徂徠の手になる重要な文献でありながら、正面からそれを取り上げた研究はなく、江戸漢詩文研究に新生面を拓いたといえる。 (2)江戸後期の学芸の転換を展望するために、経学的思考-とりわけ「礼楽」に対する-の後退について検討を加えた。 寛政期以降、徂徠学を基盤とする「礼楽」への関心が後退する過程を検討した。この変化は、會澤正志齋と明治以降の「水戸学者」の断絶など「国体」論にも影を落としていることが明らかになった。これによって従来、近代の「国体」論の淵源としてとりあげられることの多かった正志齋の学問について文人社会の変動という視点を加えることで、別の見方が可能になることを示した。 (3)寛政期前後の京都の学芸について、梅辻春樵を軸に考察した。 春樵の詩風の源流を探るために、彼の師に当たる村瀬栲亭や皆川淇園との関係を検討した。ライデン大学での研究報告及び資料調査によって、十八世紀後半の京都の文苑に関して文人と公家衆との交流など重要な知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内外の資料調査に基づく成果を、学会・研究会での報告及び論文(二件)で公にしており、研究は順調に進んだ。予算残額の関係もあり、本年度予定していた関西・北九州での長期間の資料調査は来年に見送ることにしたため、上記の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、研究初年度ということもあり、文人社会の変化について大きな見取り図を描くことに傾注した。来年度は関西・北九州地域で現地調査を行い、そこで得られた資料に基づき、文人間の交流の具体的なあり方により肉薄した研究を行なうことを考えている。
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Research Products
(4 results)