2011 Fiscal Year Annual Research Report
チックの神経心理学的理解と介入法の開発-不随意な感覚を統制する認知機能への着目-
Project/Area Number |
11J11084
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松田 なつみ 東京大学, 大学院・教育学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | トゥレット症候群 / 自己対処 / 神経心理学 / 認知機能 / 質的研究 |
Research Abstract |
本研究の目的は、前駆衝動やチックにより効果的に対処するための方法や必要な認知機能を明らかにすることで、チックのメカニズムを神経心理学的に理解し、その認知機能への介入による治療法、すなわち神経行動療法の開発への示唆を得ることである。初年度は、TSを有する本人がチックにどのように対処しているか、チックへの自己対処を質的に検討した。その結果、チックへの自己対処の内容は、抑制、前駆衝動への対処、意識しないような工夫の3点に分けられることが分かった。また、質問紙調査の結果、多くのトゥレット症候群を有する者が自発的にチックの抑制を頻繁に行っており、そのことによって疲労したり、辛さを感じているという実態が明らかになり、チックへの自己対処をより効果的に行えるような援助の重要性が明らかになった。初年度はこのインタビュー研究の分析を更に進めると共に、質問紙研究の解析と投稿準備をすすめた。チックへの自己対処の実態については、これまで把握されてこなかった重要な知見であるため、チックへの自己対処の質問紙研究は英語での投稿を目指し、その準備を進めている。同時に博士課程以降の新たな実験系を作るための準備を進めてきた。実験系の作成に関して、東大病院の中心的な研究班のメンバーとの定期的なミィーティングの他、他学部や他大学の研究者とも積極的に連絡をとり、研究の相談をしてきた。さらに、大学生に対する予備的な実験を行い、研究計画を見直した。その研究計画を東京大学医学部の倫理委員会に提出し、受理され、24年度から実験研究をスタートさせる準備を整えた。また、Psychiatry and Clinical Neuroscience誌に英語論文が受理された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H23年度の予定が、質的研究の再分析、質問紙研究の再分析及び投稿準備と、実験計画の系の作成準備であった。おおむね、どの項目に関しても、予定通り行っており、学会発表も2つ行った。H23年度の実験計画の系の見直しの際に、H23年の4月段階では必要性に気づくことができなかった、皮膚電位反応やデータ収集システム等の機器の必要性が明らかになり、予算の再編成を行い、必要な機材を購入した。この点で、予算が大幅に見直されたり、研究計画の見直しがあったが、本来の目的を達成するために、必要な見直しであった。
|
Strategy for Future Research Activity |
H24年度からは、トゥレット症候群を有する本人に、実際に神経心理検査や前駆衝動、チックの抑制の測定等の実験を行っていく。チックのコントロールに関連する認知機能を測定するという研究は、前例がない新しい試みである。そのため、実際の測定に関して予想外の反応や、上手くいかない点が見込まれるため、24年度の最初は予備的な研究を繰り返し、課題を見直し、24年度の夏頃から本格的な研究の実施を行う予定である。
|
Research Products
(5 results)