2012 Fiscal Year Annual Research Report
クルマエビのフリーラジカル生成遺伝子群の解明とこれらを指標とした早期診断への応用
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11J11175
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
稲田 真理 宮崎大学, 農学工学総合研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Dualオキシダーゼ(Duox) / NADPHオキシダーゼ(Nox) / フリーラジカル / クルマエビ / 生体防御 / 殺菌・殺ウイルス / 遺伝子ノックダウン / ウイルス病・細菌感染症 |
Research Abstract |
自然免疫が生体防御能の中心であるエビ類において自然免疫機能で特に重要である殺菌・殺ウイルス能をもつフリーラジカルである活性酸素種(ROS)と活性窒素種(RNS)は特に重要である。そこで、RNSの一種である一酸化窒素を合成する一酸化窒素合成酵素(NOS)およびROS生成酵素群に関する研究を行った。本研究ではエビ類における生体防御と生命維持などの統合的な生体制御機構をフリーラジカル生成酵素群の側面から明らかにし、早期疾病診断へ応用することを目的とした。 平成24年度はフリーラジカル生成酵素群の遺伝子同定、各種解析、遺伝子ノックダウンを行う計画であり、昨年度に続いて新たにクルマエビにおいて、ROSの1種である過酸化水素を生成するDual酸化酵素(Dual oxidase:Duox)の同定に成功した。クルマエビのDuox遺伝子の全長は4,695bp、推定1,498アミノ酸残基、推定アミノ酸分子量は、173kDaであった。分子系統解析において節足動物のDuoxとクラスターを形成した。アミノ酸配列を用いた相同性解析において、クルマエビのDuoxは、コクヌストモドキ(Tribolium castaneum)のDuoxと69.3%、ヒトのDuox1、2とそれぞれ、41.2%、39.2%の相同性を示した。発現解析において、クルマエビの鯉においてDuox遺伝子の高い発現が確認された。またin vivoの感染実験において、クルマエビ急性ウイルス血症原因ウイルス(penaeid rod-shaped DNA vims:PRDV)接種後60時間でDuox遺伝子の発現が有意に上昇し、その後低下した。遺伝子ノックダウンの実験において、Duox遺伝子をノックダウンすると、エビの生残率が低下する傾向が認められた。以上より、クルマエビDuoxは節足動物のDuoxに近縁であり、生体防御や恒常性維持に関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
同定途中の遺伝子もあるが、研究は当初の計画に沿っておおむね順調に進展している。 最終目的を果たすために掲げた今年度の目標「エビ類のフリーラジカル生成酵素群に関する基礎的データの構築」を達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画どおり、平成25年度は各遺伝子のmRNAをinsituハイブリダイゼーションによって検出する。各酵素の遺伝子配列からペプチド抗体作製用エピトープを探索し、合成ペプチドに対するペプチド抗体を作製する。 その際には、各遺伝子のアミノ酸配列の平均疎水性値や電荷密度を参考に、特異性の高い抗体を作製する。ペプチド抗体を用いて、刺激したエビにおける各臓器での発現を免疫組織化学染色法によって解析する。前年度に設定したマルチプレックス同時発現定量解析条件を用いて,これらの遺伝子の動的解析を行う。最終的には、初年度からのデータを統合し、NOS遺伝子およびROS生成遺伝子の詳細を明らかにするとともに,疾病診断に適した遺伝子の選抜を行う。
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