2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J11247
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Research Institution | Aichi Shukutoku University |
Principal Investigator |
蔵冨 恵 愛知淑徳大学, 心理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 認知的制御 / 適合性効果 / 視覚情報選択性 / 競合適応効果 |
Research Abstract |
本研究の目的は,視覚情報における認知的制御機構を明らかにすることである。本年度も昨年度に引き続き,視野空間に依拠して行われる認知的制御について,刺激反応競合パラダイムを用いて適合性効果の変動に注目した。この適合性効果の変動は視覚情報における認知的制御の指標として用いることができる。 今年度は,大きく二つの視点から視覚情報の認知的制御について検討した。一つ目は,両半球に刺激が投入される中央視野呈示を活用することであった。左右視野に加え,中央視野を用いることによって,中央視野(左右両半球)の制御が左右視野に対して影響を及ぼすかどうかを検討した。つまり,中央視野における競合頻度の多寡を操作し,それらを一定にした左右視野の適合性効果の変動に注目した。実験の結果,競合頻度を一定にした左右視野においても適合性効果の変動が見られ,中央視野に対して行われる視覚情報選択性の制御が左右視野に対しても行われることが明らかとなった。従って,空間に依拠する制御は半球が起因しても行われる可能性を示唆した。 二つ目は,大脳半球機能差の生じる課題を用いることであった。これは複合パターン刺激を左右視野にランダム呈示し,刺激に対する大域もしくは局所情報の同定を求める課題であった。左右各視野における競合頻度の多寡を操作し,それらの干渉量の変動に注目した。実験の結果,課題要求が優位となる半球に刺激が投入された際には,競合頻度の影響を受けないのに対して,課題要求が優位とはならない半球に刺激が投入される事態のみ競合頻度の影響を受けることが明らかとなった。これは,優位ではない半球は競合解消経験の蓄積により,効率的な課題遂行を行うための制御が働いたためと解釈できる。 このように大脳半球機能差からの視点を加えることによって,視覚情報に対する認知的制御は,空間に依拠するだけではなく,半球にも起因して行われることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一側半球における制御だけではなく,両半球における制御が視野空間に及ぼす影響を明らかにすることができた。それに加え,大脳半球機能差の視点から半球優位性に応じて視野情報に対する制御が異なることを示唆した。これらの知見から,これまで空間に依拠すると考えられてきた視覚情報の制御は,半球が起因しても行われていることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,行動指標を基に認知的制御機構を明らかにする。これまでの知見では,視覚情報における制御が半球にも起因して行われることが示されてきた。しかし,これまでの研究では認知的制御の保持,適応の側面から検討されたものは見られない。それゆえ,半球が起因するのは保持の段階なのか,適応の段階なのかは明らかになっていない。そこで,今後は持続性の側面から保持を検討し,刺激切り替えの側面から適応を検討する。これらを明らかにするために,生理指標に基づいた知見が必要となってくる。そして,それらの知見を基に視覚情報における認知的制御モデルの構築を目指す。
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