2011 Fiscal Year Annual Research Report
新規プロテインホスファターゼによる選択的スプライシング制御機構とストレス応答
Project/Area Number |
11J40016
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Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
渡辺 順子 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(RPD)
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Keywords | PGAM5 / ミトコンドリア / IL-1β / インフラマソーム |
Research Abstract |
所属研究室の解析により、新規セリン/スレオニン特異的プロテインホスファターゼであることを明らかにしたPGAM5が、選択的スプライシングの活性化補助因子(co-activator)として知られるSRm160のリン酸化状態を調節することで選択的スプライシングを制御する活性を持つことを見いだした。 さらにその後の解析により、PGAM5はおもにミトコンドリアに局在することが示された。一方、ミトコンドリアが、炎症性サイトカインであるIL-1βやIL-18の産生に重要な役割を担うシグナル伝達タンパク質複合体であるNALP3インフラマソームの活性化に寄与していることが他のいくつかの研究グループから報告された。そこで、NALP3インフラマソームの活性化におけるPGAM5の役割を検討するため、PGAM5ノックアウトマウスよりマクロファージおよび樹状細胞を調製し、各種インフラマソーム活性化刺激を加え、Caspase-1の活性化およびIL-1βの産生を検討した。その結果、Nigericinという薬剤によるインフラマソームの活性化がPGAM5ノックアウトマウス由来の細胞において減弱していることが明らかとなった。さらに、NigericinがPGAM5依存的にインフラマソームを活性化する機構を探るため、Nigericinに対するミトコンドリアの応答を調べた。その結果、野生型マウス由来の細胞のNigericin処理によってミトコンドリアの膜電位が上昇する傾向が認められた。NALP3インフラマソーム活性化の解析モデルとして汎用されるTHP-1細胞株を用い、Nigericinによるインフラマソーム活性化に対する脱共役剤CCCPの作用を調べたところ、CCCPの前投与によってミトコンドリアの膜電位を消失させておくと、Nigericinによるインフラマソームの活性化が部分的に低下することが分かった。よって、少なくともNigericinによるインフラマソームの活性化にはミトコンドリアを介する経路と介さない経路が存在し、ミトコンドリアを介した経路にPGAM5が関わっていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の前半においては年次計画通りに研究を進めていたが、いくつかの難しい局面が重なり、思うような結果が得られていなかった。そこで、PGAM5ノックアウトマウスの表現型解析も併せて検討することで、PGAM5が炎症の制御において重要な役割をもつことを新たに見いだした。当初の方向性とは異なるが、新規プロテインホスファターゼの機能の一つを明らかにしたという成果は大きく、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度新たに見いだした、PGAM5の炎症制御における役割を中心に、今後も機能解析を進めて行くことで、新規プロテインホスファターゼの機能を明らかにする。
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Research Products
(2 results)