2011 Fiscal Year Annual Research Report
筋内脂肪のエネルギー代謝機序の解析―筋線維タイプによる脂肪合成・取込能の差異―
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11J40017
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
水野谷 祥子 (澤野 祥子) 九州大学, 大学院・農学研究院, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 骨格筋 / 筋線維 / 筋内脂肪 / ミオシン重鎖 / モノクローナル抗体 |
Research Abstract |
骨格筋は生体最大のエネルギー消費器官であり、そのエネルギー代謝調節、特に脂肪代謝調節機構の解明が肥満解消に最も重要であると考えられる。脂肪酸の正味消費量は、酸化分解とトリグリセリド合成(脂肪合成),の収支で決まるため、合成経路の理解は不可欠であるが、「脂肪合成」の調節機構はほとんど分かっていない。代謝機序の全体像を理解するためには、酸化・合成の両面から作用機序を調べる必要がある。本研究では骨格筋の「脂肪合成・蓄積能力」に焦点を当て、筋線維タイプの差異に応じた脂肪酸取込・脂肪合成活性・蓄積能の差異、また、脂肪合成・蓄積においてキーとなるタンパク質を明らかにすることを目的とする。 初年度では、筋線維タイプ(1,2A,2X,2B型)を分類・明視する実験系構築のため、各筋線維タイプのミオシン重鎖アイソフォームを識別するラットモノクローナル抗体をそれぞれ作製した。各々の抗体上清を用いて、マウス骨格筋横断切片(soleus、plantaris、gastrocnemiusを含む)の免疫組織染色を行ったところ、各ミオシン重鎖アイソフォーム特異的な染色像が得られた。この結果は、作製した抗体が筋線維タイプを正確に識別していることを示している。現在、筋線維タイプを明視するため、各精製抗体と標識キットを用いた条件検討を行っている。また、並行して、筋内脂肪量を評価するための予備実験を行った。単離直後の筋線維をNile redおよびBODIPY493/503にて染色し、脂肪滴の染色および存在を確認した。さらに、マウス骨格筋線維を生体外で培養するため、培養条件の最適化を試みた。その結果、細胞外マトリクス分解酵素は、単独で使用するよりも複数の酵素を組み合わせることでその効果が飛躍的に高まり、生存率の向上につながることを見出した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究遂行において、筋線維タイプの分類は必要不可欠なものである。当初の計画では、その分類に購入抗体を利用する予定であったが、検討の結果、明確な分類ができないと判断し、抗体作製を速やかに実施した。この成果により、永続的な特異的抗体の入手が可能になった。併せて、培養系の最適化や筋内脂肪量の評価系の検討など、研究遂行の核となる技術について初年度でほぼ整備できた。 従って、計画に完全に沿ってはいないものの、おおむね順調に計画が進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策として、抗体標識方法を検討し、各筋線維タイプを同定する手法を確立させることが急務とされる。 並行して、骨格筋のトリグリセリド合成および蓄積能を明らかにするため、安静時および運動負荷後の筋内脂肪量の変化を評価する。この際、マウスに施す運動負荷のレベルおよび時間について予備検討し、評価系の最適化を行う必要があると考えている。
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Research Products
(1 results)