2011 Fiscal Year Annual Research Report
現代中央アジアのムスリム女性の信仰実践の変容と再イスラーム化へのインパクト
Project/Area Number |
11J40089
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Research Institution | Hokkaido University |
Research Fellow |
菊田 悠 北海道大学, スラブ研究センター, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 中央アジア / ウズベキスタン / イスラーム / 民族 / 伝統 / 近代化 / 市場経済 |
Research Abstract |
本年度は、まず4月にウズベキスタンにおけるフィールドワークを2週間行なって、本研究課題に関する予備的調査を行なった。続いて6月に、他の研究者との共同研究学会に参加して様々な刺激を受けた。これは旧ソ連圏とその周辺国の近年の宗教復興と越境現象を人類学的な視点から考察する共同研究であり、筆者は次のような発表を行なった。ソ連の反宗教政策が緩和されて後、中央アジア諸国でイスラームへの関心が高まっているが、クルアーンやハディースへの回帰というサラフィー主義的な運動とともに、ムスリムとしての「民族伝統」への回帰、すなわち土着的信仰をイスラームの文脈で正当化するプロセスがみられることが、中央アジアの特徴である。 本年度の最後には「ウズベキスタン東部のムスリム陶工における聖者崇敬:集団の統制から個の表現へ」と題した論文を『文化人類学』誌に投稿した。これはウズベキスタン東部の町における職人間の守護聖者崇敬の事例を取り上げ、イスラームの聖者崇敬に関する議論に絡めて考察したものである。それにより、宗教やイスラーム的信仰実践に否定的だったソ連時代を経ても、現地では今も守護聖者への崇敬が浸透していること、一部業種では中世さながらに職能者集団の連帯やメンバーの管理に一定の影響を及ぼし続けていることが明らかになった。また、資本主義化するポスト・ソヴィエト社会の中では守護聖者が働く意義や自己の努力への評価を提供する意味の枠組み、市場経済のなかで必要とされる作家性や創造力の源泉等として重要になっていることも指摘し、聖者崇敬の単なる「衰退」や「現代への適応」ではなく、性質の変化や信仰の内容における焦点の移り変わりを細やかに捉える視点を提案した。この他に、本研究課題に関する文献資料の収集と読み込みを続けて、次年度には本格的な現地調査に乗り出す予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の初めに今後の現地調査のための予備的調査を行い、おおよそ必要な情報を得ることが出来たため。また、現地調査と並行して重要である文献調査についても進展しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も現地におけるフィールドワークと国内を中心としたその分析作業及び文献調査をバランスよく進めていく必要があり、そのためにインターネットを通じた文献収集などの技法を駆使しながら研究を推進していく予定である。
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Research Products
(2 results)