2012 Fiscal Year Annual Research Report
現代中央アジアのムスリム女性の信仰実践の変容と再イスラーム化へのインパクト
Project/Area Number |
11J40089
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Research Institution | Hokkaido University |
Research Fellow |
菊田 悠 北海道大学, スラブ研究センター, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 中央アジア / ウズベキスタン / イスラーム / ジェンダー / 市場経済化 |
Research Abstract |
本研究は、中央アジアのウズベキスタンにおけるムスリム女性の信仰実践が、ソ連時代およびソ連崩壊後にいかなる変容を遂げつつあるかをフィールドワークと文献資料の活用によって解明し、当地のイスラーム信仰実践におけるジェンダーの構図を明らかにすることを目的とする。また、女性間の慣習儀礼の実態の解明と彼女らの信仰実践が当地の再イスラーム化の行方に持つ影響を考察する。 この目的に照らして平成24年度は現地調査を行った。その結果、ソ連崩壊後の社会、経済が混乱した10年に比べて、2000年代に入ってからの10年では政治的安定のもとに市場経済化が進み、ムスリム女性の生活パターンと信仰実践にも変化がみられることが明らかとなった。その要点は、第一に市場経済の定着である。これにより女性間の慣習儀礼もより多額の現金を必要とするかたちに変化していることがわかった。ただし、地方の女性の多くの「商品の購買」や「消費」は、地域共同体や親族組織における安定や地位向上を主目的とし、慣習儀礼の目的や信仰実践の大きな変化には(少なくともまだ)つながっていない。 次に、ここ10年では男性を中心としたロシア等諸外国への出稼ぎが一般化しており、これが当地の公的職場(役所、学校、地域共同体の重役など)での女性の多さと活躍につながって、女性は性別に隔離された空間で行動するべきという当地の古いジェンダー規範との齟齬をきたしている。これは世代間の諍いや治安の不安定化の原因ともなっており、今後さらに規範と実践の矛盾が問題化すると予想される。 本年度は以上の調査結果と考察を中間発表したが、次年度ではさらに考察を深化させて研究成果としてまとめて発表することを目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的に照らした調査を順調に進めており、中間的考察にたどり着いたため。
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Strategy for Future Research Activity |
さらなるデータ分析を進め、他地域の市場経済化に伴う社会変化のデータとも照らし合わせて、まとめの考察を行い、発表していくことが必要である。特に問題点はない。
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Research Products
(2 results)