2013 Fiscal Year Annual Research Report
現代中央アジアのムスリム女性の信仰実践の変容と再イスラーム化へのインパクト
Project/Area Number |
11J40089
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Research Institution | Hokkaido University |
Research Fellow |
菊田 悠 北海道大学, スラブ研究センター, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 中央アジア / ウズベキスタン / イスラーム / 市場経済 / ジェンダー / 儀礼 / 慣習 |
Research Abstract |
平成25年度はこれまでの現地調査にもとづき、研究成果としてまとめて発表する作業を行った。 まず、民族学博物館(大阪)研究報告集に載せる論文では、ウズベキスタンにおいてはソ連崩壊後の社会、経済が混乱した10年に比べて、2000年代に入ってからの10年では政治的安定のもとに市場経済化が進み、ムスリム女性の生活パターンに大きな変化がみられることを指摘した。それによれば、ここ10年の市場経済により女性間の慣習儀礼もより多額の現金を必要とするかたちに変化しているが、地方の女性の多くの「商品の購買」や「消費」は、地域共同体や親族組織における安定や地位向上を主目的とし、慣習儀礼の目的や信仰実践の大きな変化には(少なくともまだ)つながっていない。一方で、近年では男性を中心としたロシア等諸外国への出稼ぎが一般化しており、これが当地の公的職場(役所、学校、地域共同体の重役など)での女性の多さと活躍につながって、女性は性別に隔離された空間で行動するべきという当地の古いジェンダー規範との齟齬をきたしている。これは世代間の諍いや治安の不安定化の原因ともなっており、今後さらに規範と実践の矛盾が問題化すると予想される。 以上の考察は、ウズベキスタンのオアシス地域の街区共同体(マハッラ)は変化に乏しく、伝統の源であるとみなしがちであった従来の研究とは異なり、街区共同体が市場経済の中で社会変化の中心となりつつあることを明らかにしている。この点をまとめた英語論文を、Central Asian Survey誌に投稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
(抄録なし)
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Research Products
(1 results)