2012 Fiscal Year Annual Research Report
作物全般に適用可能な分岐・矮性化・分化能を制御する転写因子の単離とその利用
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11J40109
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
樋口 美穂 (池田 美穂) 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 矮性化 / 葉数・枝数 / 転写制御因子 / CRES-T法 / リプレッションドメイン / アクティベーションドメイン |
Research Abstract |
平成24年度は様々な有用作物全般において効率的に矮性化、枝数・葉数の増減を誘導することのできるコンストラクトの作成を目指して、研究を行った。 まず、既に草丈を低くする遺伝子、HR0444の機能を解析し、効率よく矮性化を誘導する方法を探索した。そもそも、HR0444は植物細胞の伸びを抑制することがわかっていたが、解析を進めた結果、細胞伸長を直接促進する遺伝子群、ACE(昨年の報告書におけるTHINと同一の遺伝子。論文発表時に改名)を同定、ACEが2量体を形成してDNAに結合し、細胞伸長の促進に関連するEXP8などの遺伝子発現を直接に活性化するのに対して、ACEとHR0444が結合した場合にはACEのDNA結合が阻害され、EXP8などの発現が抑制され、細胞が伸びなくなることを証明した。さらに、HR0444に結合する因子PREについては、HR0444と結合することでそのACEとの結合を阻害し、結果的にACEの転写活性化能を復活させることを証明した。最終的には、ACE,HR0444,PREという3種類のbHLH (basic helix loop helix)転写制御因子が互いに結合し、機能を阻害し合うことで植物細胞の縦の伸びを制御するシステムをtriantagonistic bHLH systemと名付け、論文発表すると同時に産業技術総合研究所からプレスリリースした。2因子間の拮抗阻害システムは既に動植物で報告されているが、3因子による拮抗阻害は概念的に新しく、重要な発見といえる。また、単離した3種類のTHINのCRES-Tコンストラクト(転写アクティベーターの機能を優性的に抑制する手法)が強い矮性形質を誘導することに加えて、プロモーターを改変した場合には、葉、茎、さや、花柄など特異的な組織を短くできることを発見した。この成果は今後、例えば「背は低いが葉のサイズは変化しない」など、より有用性な作物の作出に役立つと期待される。 一方で、分岐数・葉数の制御に関与するAt2g36080については、重複遺伝子At3g11580, At2g06250との3重変異体を作成し、マイクロアレイにより遺伝子発現の変化を網羅的に解析した。その結果、3重変異体においては茎頂組織での器官形成に関わる遺伝子群の発現が低下していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本プロジェクトにおいては倭性化・分岐制御などをターゲットとし、モデル植物シロイヌナズナにおいて重要な転写制御因子を同定、解析し、植物全般に共通のメカニズムに関与することを確認した後に、これをベースとして改変を加え、作物全般に同じ有用形質を付与することのできるコンストラクトを作成することを目的としている。本年度行ったHR0444の解析により明らかになった植物の細胞伸長制御システムについての知見は、より合目的に作物の形態を改変する技術の確立に役立つと期待されることから、本プロジェクトはおおむね順調に進展していると私は思う。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続き、HR0444とその関連遺伝子についての解析、改変をすすめることで、より汎用的に、また、適切に作物の形を改変する技術の確立に努めたい。また、本年度マイクロアレイ解析を行ったAt2g36080遺伝子とその重複遺伝子については、さらに詳細にアレイのデータを解析し、それを利用して、メカニズムの解明につなげたいと考えている。本年度は実験を行ったものの特に顕著な成果を得ることができなかった「植物細胞に再分化能を付与する機能をもつ転写制御因子を利用した新しい形質転換法の開発」については、本年度の結果を参考として、他の遺伝子の利用や、他のベクター系の利用なども視野に入れて、引き続き研究を遂行していく予定にしている。
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Research Products
(4 results)