2013 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀前半の日中両国におけるロシア文学受容の比較研究-ドストエフスキーを中心に
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11J40145
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
白井 澄世 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 中国 : 日本 : ロシア / ドストエフスキー / 茅盾 / 羅淑 / 中国現代文学 |
Research Abstract |
1、「1930~40年代中国におけるドストエフスキー作品の翻訳について」のデータベース作成準備 昨年に引き続き上海図書館・北京大学図書館・中国国家図書館等において収集した1930~40年代中国のドストエフスキー関連資料の整理・分析を行った。今年度は1930年代中国においてドストエフスキー『罪と罰』の映画化および版画化された状況を調査し、都市大衆文化の成熟という観点からロシア文化受容状況を考察し、データベース作成に反映させる作業を進めた。さらに、1920年代よりロシア文学に深い関心を持つ作家茅盾がドストエフスキー映画『罪と罰』について作品『蝕』の中で映画に言及していることを発見し、1930年代上海都市文化と小説の関係の考察を中心にした論文の執筆を進めた。 2、論文「1930年代中国におけるロシア文学翻訳の一面―羅淑を中心に―」執筆に向けた調査・分析 中国におけるロシア文学翻訳は1940年代に耿済之による原文からの翻訳が出現するまでは英語・仏語・日本語からの重役が主であり、英語や日本語からの重訳については既に研究が存在するが、仏語からの重訳についての研究はこれまで存在しない。その部分を明らかにするべく1930年代上海に登場した女性作家・羅淑の作家活動および作品の分析を進めた。羅淑は、フランスに留学し仏文学の翻訳を行いつつチェルヌイシェフスキー『いかになすべきか』等のロシア文学を仏訳から重訳したが、その作家活動については岩松久雄論文「「羅淑研究資料」をめぐって」(1993年)の研究があるのみで殆ど存在しない。本研究において、筆者(白井)は羅淑の作家活動に関わるアナキスト巴金や立達学園との関係に焦点をあてつつ、上海都市文化とロシア文学翻訳について考察し、さらに「生人妻」を中心とする作品の分析を行い論文執筆を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データベース作成も順調に進展し、研究テーマに沿った論文執筆も進展している点において、当初の計画に沿っておおむね順調に研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、昨年度、本年度の調査・分析に基づき、論文を完成させ投稿する予定である。また「1930~40年代中国におけるドストエフスキー作品の翻訳について」のデータベースを完成させる。
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