2011 Fiscal Year Annual Research Report
現代アフリカ農村における脱農民化・生計多様化と開発 : ケニア西部の事例から
Project/Area Number |
11J40154
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 紀子 東京大学, 社会科学研究所, 特別研究員(RPD)
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Keywords | ケニア / 貧困 / 脱農業化 / 生計多様化 / 社会ネットワーク |
Research Abstract |
ケニアブニャラ県における予備調査の経過報告と、今年度の本調査・研究手法などについて、5月の「日本アフリカ学会」と6月の「国際開発学会」にて口頭発表を行った。8月にケニアへ渡航し、現地調査を実施した。ナイロビの統計局図書館において、人口統計・開発計画書を入手し、マクロデータを収集した。ブニャラ県へ移動し、調査対象村の全世帯をまわり、質問票調査(所得・支出、職業、家計・資産、親族関係、贈与の授受)をして情報を収集した。県庁を訪れ統計資料を入手し、村の形成史に関するインタビューを実施した。地域の慣習や文化についても聞き取りを行った。 帰国後ブニャラ県の調査を元に博士論文を完成させ、東京大学大学院経済学研究科に提出し、3回の審査会を経て2012年2月、審査に合格した(学位の取得時期は4月以降)。調査村の社会ネットワークを踏まえて生計を捉えた論文は、貧困研究における新たなアプローチの試みとして高く評価された。審査会では、東京大学内外の教授・研究者からコメントをいただいた。アジア研究とアフリカ研究の間に農村経済のキー概念に齟齬があること、親族ネットワークを代替する社会ネットワークにも注目する必要があること、社会ネットワーク分析の制約など、特別研究員としての研究を進展させ、出版をめざすに向けて多くの助言を得ることができた。 また、アジア経済研究所の雑誌『アジア経済』へ、成果の一部をまとめた論文を投稿した。現在、レフェリーのコメントを受けて最終段階の修正を行い査読結果待ちの状況である。ケニア農村調査結果を英語の論文としてまとめている最中でもあり、京都大学アフリカ地域研究資料センターのAfrican Study Monographsなどへ投稿することを予定している。他国の研究者との共通したテーマを建てた比較研究も視野に入れ、出版に向けて準備を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
調査村3村における全戸を訪問し、詳細な家計データと社会関係のデータを集められたので、研究に必要なデータ収集については、現時点で量的・質的に十分に行えた。また、二度の学会発表および博士論文の完成により、研究成果の一部を公表し、他の研究者からの意見・コメントを得られた。これらの指摘や比較研究の視点を取り入れた投稿論文の完成と、予備調査に関する計画、書籍の完成へ向けた準備を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ブニャラ県で行われている投入節約的な自然農業の維持との関連から、日本、東南アジア(インドネシア・フィリピン)、メキシコ、ナイジェリアをフィールドとする農業・農村研究者との比較研究を取入れる予定である。地域コミュニティと自然農業を生かした貧困削減の実態と展望について、他国の研究者との共通した質問票を用いた調査を行う予定である。ブニャラ県の農業や社会ネットワークを他地域と比較し、世界的な農業の流れの中でアフリカ農村がどのように位置づけられるのかも視野に入れた研究として仕上げることを予定している。
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Research Products
(3 results)