2012 Fiscal Year Annual Research Report
現代アフリカ農村における脱農民化・生計多様化と開発:ケニア西部の事例から
Project/Area Number |
11J40154
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 紀子 東京大学, 社会科学研究所, 特別研究員(RPD)
|
Keywords | ケニア / 貧困 / 脱農業化 / 生計多様化 / 社会ネットワーク |
Research Abstract |
4月、ケニアブニャラ県における世帯調査と社会ネットワーク分析の成果の一部を、東京大学大学院経済学研究科現代経済専攻博士論文として発表した。さらに、家計調査データの時系列的研究計画および社会関係と生計の関連に関する考察について、5月の「日本アフリカ学会」(大阪)において口頭発表を行った。 8月には約1ヵ月間にわたりケニアブニャラ県に滞在し、前年度の調査を継続させ、農業、漁業、畜産業等多様な生計の組み合わせの実態と、住民の出稼ぎ、移入、結婚、離婚、死亡や、儀礼的な親族関係の形成による親族・姻族関係の変容に関するパネルデータの収集を行った。調査地では、県庁や市役所を訪問し、前年度の調査・成果の報告を行い、人口変化や土地制度に関する統計資料の収集も行った。 帰国後、調査村における生計戦略の実態と社会関係の意義に関する考察を、社会ネットワーク分析の手法を取り入れながら進展させ、日本アフリカ学会誌『アフリカ研究』に論文を投稿し、2名のレフェリーによる査読を経て、11月に受理が決定した(発表は2013年の予定)。 12月には、国際開発学会(神戸)において、ブニャラ県の投入節約的な農業と生計多様化に関連し、ケニア中央部やアジア稲作地域で広まっている環境保全的な農業システムとの比較研究を行い、有機農業と社会ネットワークに関する比較研究の成果の一部を発表した。 また、アジア・ラテンアメリカ・アフリカ研究者と協力し、農村における社会関係と持続的な農業に関する国際比較研究を行い、各国からの伝統的な農法を実践・研究する研究者、NGO、農家等を招聘して行われた3月の国際シンポジウム(東京大学)において、ケニアの事例を英語で発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度の研究成果を博士論文として発表することができた。また、調査村でも調査を継続し、より詳細な分析を加え、学会誌に論文を投稿し、査読を経て掲載が決定した。農村開発における他地域との比較調査を視野に入れ、計画以上に研究の展開をはかる準備を行うことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
ブニャラ県における調査を継続し、人口変動や経済的ショックを経た時系列的な生計分析を進展させる。また、投入節約的な自然農業の維持との関連から、他国の有機農業や農村開発研究者との比較研究を進展させ、地域コミュニティと自然農業を生かした貧困削減の実態と展望に関する研究成果をまとめ、学会や論文等において発表を行う予定である。アフリカ農村の変容を国際経済の中に位置づけ、持続的な農業、国際開発政策へ向けた含意を得る研究として仕上げることを予定している。
|
Research Products
(4 results)