Research Abstract |
本研究は, 主に認知症患者を対象とした音楽療法システムの開発を目的としている. システムは, 対象とする症状を発した患者の発声をもとに, 音や音楽を生成し, 提示する. 本年度は, 昨年度までに開発したシステムの機能を拡張し, 特許出願を行った. 拡張したシステムを用いて, 健常者を対象とした2度日の実験と, 認知症者を対象としたケーススタディを行った, 健購者を対象とした実験では, まず評価実験の題材とする2種類の音楽フレーズの妥当性について, 132名の大学生による聴取評価を行った. 次に, 12名の大学生に協力を得て, 各協力背の発声をもとに, システムが変換した音を提示し, その後の気分に関する評価を行った. 音の提示前後で, 気分を比較した. これらの結果は, 国際会議, 国内研究会で口頭発表を行い, 論文誌の"Journal on Advances in Life Sciences"に論文が採択された. また, 認知症者に協力を得て, 協力者が発話を繰り返しているときに, システムを使って蹄を提示するケーススタディを行った, 協力者の発話をもとに生成された音を, リアルタイムにスピーカから提示したが, 自分の発話がスピーカから聞こえているという認識がないように見受けられた. 指向性スピーカも検討したが, 思うように音が発話者に届かなかった. 来年度も引き続いて, 非装着の適切な提示デバイスを検討する. また, 認知症者など記憶障害をもつ人が, 1人でも, 必要なときに音楽療法システムを利用できることを目的に, スマートフォンなどのICT機器の設置方法について検討した. 近い将来, 音楽療法システムをスマートフォンでも利用できるように開発する予定であるが, 記憶障害があると, スマートフォンを携帯しなかったり, 置き忘れたりする傾向がある. そこで, 在宅時には, 常に飼い犬の背中にスマートフォンを設趾し, 必要なときに, 主人(認知症者など)に届けることができれば, スマートフォンの紛失を防ぎ, システムを有効に活用できる. 本年度は, 背中に取り付けたスマートフォンのアラームが鳴ると飼い主のもとに行くようにしつけ, 5日間での成功率を調べた. 来年度, 国際会議で発表する.
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