Research Abstract |
Toll-like receptor (TLR)は,マクロファージなどの自然免疫担当細胞に発現しており,自然免疫において重要な役割を担っている.TLRは,病原体の初期感染時に,病原体を認識することでサイトカインを誘発し,生体防御に寄与している.しかしながら,一方で,TLRシグナリング制御機構の破綻は,時に重篤な炎症性疾患を誘発する.従って,適切なTLRシグナリングの制御は,生体にとって極めて重要であり,TLR シグナリングの制御機構の理解は解決すべき課題である.Tsukushi (Tsk)は,発生学の分野で見つけられてきたタンパク質であり,生体時における機能はわかっていない.Tskは,Small leucine-rich repeat proteoglucan (SLRP)familyの一つであり,細胞外マトリックスの成分として機能すると考えられている.SLRPfamilyは,近年,自然免疫との関連が報告されており,特に,TLRシグナリングを制御するタンパク質として注目されている. 本研究では,TLR制御機構機構の一端を明らかにすることを目的として,機能未知タンパク質TskがTLRシグナリングに関与するか否か検討を行った.その結果,以下の三つのことを明らかにした.第一に,Tsk-/-マウスは,LPS+D-galactosamine誘導性ショックモデルにおいて,Tsk+/+と比較して生存率の改善が認められた.第二に,ショックモデルにおける病態発症に深く関与すると言われているマクロファージにおいて,Tskは,LPS誘導性のサイトカイン発現を正に制御することがわかった.第三に,RAW264細胞において,Tskは,p38MAPkinaseを抑制することがわかった.以上のことにより,Tskは,おそらく,自然免疫担当細胞であるマクロファージの機能に影響を与え,LPS-TLR4シグナリングを正に制御する分子なのではないかと考えられる.しかしながら,作用機序については不明な点が多い.今後,どのようにして,LPS-TLR4シグナリングを制御するかについて,細胞内外どちらで作用しているのか,LPS-TLR4シグナリングに直接的に作用するのか,他のシグナリングとのクロストークにより間接的に作用するのか,なぜP38 MAPkinaseのみに作用するのかという三つに着目し,検討を行っていく必要があると考えている.
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