2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J56023
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
橋場 典子 北海道大学, 大学院・法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 法教育 / 社会的包摂 / 司法アクセス / 自己肯定感 / フィールドワーク / 司法福祉 / リーガルソーシャルワーク / プロフェッション |
Research Abstract |
本研究は、従来の「法教育」実践を議論の出発点に置きつつも、「法」が持つ多義性や現実社会への応答という新たな側面から「法教育」を捉え直そうとするものである。こうした観点に基づき、2011年度では、具体的なアプローチとして、法システムや法の制度的側面の活用は社会的包摂(social inclusion)に寄与し得るのか否か、寄与し得るとすればどのような場面で可能で、どのような場面で難しいのか、それらの背景にはどのような問題が潜んでいるのかを、調査事例を基に分析した。 具体的には、法システムの活用とそれを阻む心理的要因について着目した。このような心理的要因の存在を意識し、それを極力無くそうとする取り組みとして釧路市の自立支援プログラムの例を挙げた。そこでは、生活保護受給者がボランティア活動から就労へとつながっていく中間の時期を中間的就労と位置づけることで、より具体的に社会へ参加することを目指している。こうした取り組みは、結果として、支援者と被支援者というパターナリズムの転換に成功していることが分かった。これら一連の取り組みから、本研究課題に得られる示唆として、認識枠組みからの脱却の可能性、つまり事例では生活保護受給者を取り上げたが、法制度への認識枠組みに由来する制度活用への躊躇という構造を転換し得るものとして、狭義の社会保障に限らず人権や社会正義という「法」の根幹を伝える法教育の取り組みは位置づけられ寄与し得る、という点が指摘できた。 「法」が保持する普遍的価値の存在は、認識枠組みに由来する認識の解体や、自らが権利を持った主体だという気付きに代表される自己承認と法適用へと結びつく。それは結果として社会的包摂の空間に「法」が確固たる基盤を根拠づけていることを意味しているという、従来の法教育研究と別の、新たな視座の指摘に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現実社会でのアクチュアルな諸問題に関して、実際にフィールドワーク調査に赴き実証的調査研究を遂行できているため。また文献調査や研究会等での発表も積極的に行っているため。研究成果も学会誌に掲載されることで広く公表されており、加えて当初の予定にはなかった国際学会での報告もしていることなどから、現在までの研究達成度は当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、平成23年度の研究で明らかになった論点を踏まえ、フィールドワーク調査を継続していく。加えて前年度同様、理論枠組みの構築に向け文献調査も行っていく。これらの研究を基に、2012年度中の博士論文提出を目指す。その上で、学会や研究会等に積極的に参加・報告し、これら研究で得られた知見を広く一般に公表していくことに努める。
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Research Products
(3 results)