2011 Fiscal Year Annual Research Report
有機半導体薄膜におけるTHz光電物性の探索とTHzイメージング素子への応用
Project/Area Number |
11J56142
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
李 世光 千葉大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 有機薄膜トランジスタ(OTFT) / グラフォエピタキシー / THzセンサ / ポテンシャル障壁 |
Research Abstract |
本研究の目的は、大きなキャリア輸送障壁のないOFETの作製法を確立し、大面積フレキシブルTHzイメージングデバイスを創出するための基礎的な知見を得ることである。そのために、(1)グラフォエピタキシー効果を利用し、微小なバンド端ゆらぎを残したまま大きなキャリア輸送障壁が無いOFETを作製する方法の研究、ならびに、(2)有機電界効果トランジスタ(OFET)におけるゲート電場誘起キャリアによるTHz帯分光学的研究の2サブテーマを平行して行っている。 (2)について、OFET中の電場誘起キャリアによって、容易に検出できるレベルのTHz波吸収が生じることを示した。その吸収スペクトルは、単純なDrudeモデルでは説明できず、キャリアが置かれた環境のポテンシャルゆらぎの影響を受けていることが示唆された。今後、様々なOTFTの作製技術を統合して研究を進めてゆくことによって、THz吸収スペクトルからキャリアの状態を知るための基礎的な知見を蓄積してゆけるものと期待される。さらに、この結果は、OFET中のキャリアがTHzフォトンのエネルギーを吸収していることを示すものでもあることから、THzセンサへの応用にも希望が持てる結果である。この成果については、応用物理学会と米国材料科学会にて発表を行った。 (1)についても進展が見られた。アモルファス基板上のペンタセン薄膜においては、元々c軸こそ基板法線方向に配向しているが、面内方向には無配向である。それに対して、アモルファス基板表面に適切な周期的な溝構造を形成することによって、溝端部における表面の折れ曲がり線に対してペンタセン結晶粒のb軸が垂直になるように配向成長することを実証し、成長条件の最適化によって大きなキャリア輸送障壁を有する結晶粒界の数を1/2に減らすことに成功した。この成果については、Organic Electronics誌に論文が掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2つの研究サブパートのいずれについても、国際会議発表あるいは論文投稿に至るだけの結果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
今回実証したグラフォエピタキシーの効果をさらに高める工夫について、様々な試みを行ってゆく予定である。 さらに、今後基礎的な実験と平行して、THz波照射によるソースードレイン間ドリフト電流の変化を測定することで、THzフォトンより受け取ったエネルギーによって弱束縛電荷キャリアのドリフトが促進されることを確認する実験も行う。また、この弱束縛電荷キャリアとTHz波の相互作用をTHzセンサに利用する研究も進めてゆく。
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