2011 Fiscal Year Annual Research Report
PEG-ポリアミノ酸ブロック共重合体高次構造を制御した高分子ミセル型DDSの創製
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11J56242
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
持田 祐希 東京大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 高分子ミセル / 制がん剤 / 二次構造 / 白金錯体 / αヘリックス |
Research Abstract |
白金制がん剤DACHPtとPEG-ポリグルタミン酸ブロック共重合体の配位子交換反応により形成されるDACHPt内包ミセルは、臨床試験において良好な結果を出している。本研究では、DACHPt内包ミセルのコアを形成するポリグルタミン酸の高次構造を変化させたときに、ミセルの構造や薬剤機能がどのように変化するか検証した。尚、ポリグルタミン酸鎖として、L-グルタミン酸またはD-グルタミン酸を重合したポリマー(PEG-PLG、PEG-PDG;αヘリックスを形成する)とL-グルタミン酸とD-グルタミン酸をランダムに重合したポリマー(PEG-PDLG;αヘリックスを形成しない)を用いて各評価を行った。 ミセルの形成に関して、αヘリックスを形成する場合は粒径の小さい単分散性のミセルが高収率で得られたが、αヘリックスを形成しない場合は平均粒径が大きい多分散性のミセルが低収率で得られた。また、αヘリックスを形成に伴いミセル形成が加速された。 薬剤機能に関して、ミセルを生理食塩水に晒した場合、αヘリックスを形成するミセルはαヘリックスを形成しないミセルよりDACHPt放出が抑えられ、ミセル構造の崩壊が遅くなった。また、膵臓がんを担持するマウスに各DACHPt内包ミセルを静脈投与した結果、αヘリックスを形成するミセルはαヘリックスを形成しないミセルと比べて、24時間後の血中濃度が6倍、がんへ集積量が1.4倍大きく、より効果的にがんの成長を抑制した。今回、緻密な間質形成のため粒径が大きいミセルを透過しないと考えられる膵臓がんをターゲットとしたため、αヘリックスを形成するミセルは、その高い血中滞留性と小さい粒径により、高い制がん効果を示したと考えられる。 コアの二次構造を制御することにより、ミセルの形成過程、形状及び安定性の制御が可能であることが示され、ここで得られた知見は高分子を用いたスマートなDDS製剤を設計する際に、新しい方法論を提供するだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ミセルの基礎物性の検証が終わり、in vitro細胞毒性試験及び次年度行う予定だったin vivoにおける血中滞留性、がん集積性、制がん効果の確認まで達成できた。また、当初予定していたDACHPt内包ミセルの他にCDDP内包ミセルに関しても基礎物性の評価が進み、次年度早期に研究成果をまとめることができると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究により、制がん効果向上の原因としてミセルの血中滞留性向上とその小さい粒径が挙げられた。制がん効果向上がいずれの原因によるか確認するため、ミセルに蛍光標識を施し、in vivoにおけるがん組織透過性を評価する。また、CDDP内包ミセルに関して、in vivoにおける血中滞留性、がん集積性、制がん効果の検証を行い、ミセルコアの二次構造と薬剤機能の因果関係を明確にする。
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