2012 Fiscal Year Annual Research Report
PEG-ポリアミノ酸ブロック共重合体高次構造を制御した高分子ミセル型DDSの創製
Project/Area Number |
11J56242
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
持田 祐希 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | DDS / 高分子ミセル / 制がん剤 / 白金錯体 / ポリアミノ酸 / 高次構造 / シスプラチン / ナノ粒子 |
Research Abstract |
白金錯体制がん剤シスプラチン(CDDP)をポリエチレングリコール-ポリ-L-グルタミン酸ブロック共重合体(PEG-b-P(L-Glu))と反応させることにより、CDDP内包ミセル(CDDP/m)を調製した。CDDP/mを円二色性スペクトル及び小角X線散乱法により分析したところ、ミセルのコアにαヘリックスが整列した高次構造が存在することが確認された。そこで、P(Glu)鎖の高次構造がCDDP/mの薬剤機能に及ぼす影響を調べるために、構成グルタミン酸残基の光学活性が異なるPEG-b-P(D-Glu)と、規則構造を取ることができないPEG-b-P(D,L-Glu)を用いてCDDP/mを調製した。各CDDP/mをヒト膵臓がんを移植したマウスに静脈投与したところ、コアがランダム構造のCDDP/mは、ミセル構造の早期崩壊と共に肝臓と脾臓への集積量が急増し、腫瘍への集積が少なかったのに対し、コアにαヘリックスを有するCDDP/mは、その高い構造安定性により肝臓と脾臓への取り込みが抑制されたことで血中滞留性が向上し、腫瘍に対して効率的に集積することが明らかになった。また、各ミセルの膵臓がん治療効果を比較したところ、コアにαヘリックスを有するCDDP/mを投与した場合に20日間以上腫瘍の成長を抑制することに成功した。すなわち、ミセルのコアにαヘリックス集積構造が存在することによるミセル構造の安定化が、膵臓がんに対するCDDPの選択的かつ効率的なデリバリーを可能にし、高い制がん効果を得たと考えられる。 また、白金錯体としてより疎水的なDACHPtを内包した高分子ミセルを調製し、ミセルのコアにおける白金原子の配位構造を最適化することにより、その生理条件下における安定性を向上させることに成功した。血中におけるミセルの構造安定性の向上は、内包薬物の腫瘍に対する選択的デリバリーを可能にし、副作用を大きく抑制すると考えられる。
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