2012 Fiscal Year Annual Research Report
退職給付会計のコンバージェンスがもたらす経済的帰結の実証的研究
Project/Area Number |
11J56293
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
澤田 成章 一橋大学, 大学院・商学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 退職給付会計 / 未認識債務 / 近視眼的経営行動 / 数理計算上の差異 / コンバージェンス |
Research Abstract |
平成24年度には、主として退職給付会計を題材として公正価値会計と企業の投資行動との関係性に焦点を当てた研究を行った。退職給付債務や年金資産の一時的な価値の変動が純利益計算へ反映される度合いは、数理計算上の差異の償却年数によって規定される。そこで、一時的な公正価値の変動が純利益計算に多く含まれる場合とそうでない場合とでの企業の投資行動の違いを明らかにするために、会計利益の投資関連性に着目した。こうした研究を行う背景には以下の3つの問題意識がある。 第1に、数理計算上の差異を純利益計算に反映させるべきか否か、認識する場合には遅延認識を認めるか否か、という点についての国際的な議論の高まりが挙げられる。第2に、数理計算上の差異の純損益計算に対する影響の大きさである。多くの企業において、数理計算上の差異の償却額を足し戻した税引前当期純利益に対して、数理計算上の差異の償却額(発生額)の大きさは5%以上となる。第3に、日本企業の経営の時間軸が短期化しているのではないかとの懸念がある。その中で、公正価値会計の拡大が近視眼的経営を助長している可能性も指摘されている。 こうした観点から行った研究結果を、投稿論文「数理計算上の差異の償却年数と会計利益の投資関連性」としてまとめ、査読審査を通過して掲載された。 また、平成23年度に日本会計研究学会において報告し、平成24年度に投稿論文「過去勤務債務の償却年数設定における裁量的行動」として会計プログレスに掲載された論文が、2012年9月に日本会計研究学会の学会賞である学術奨励賞を受賞した。
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