Research Abstract |
平成24年度の研究成果は大きく二点からなる.二編の研究論文"Sequential Procurement Auctions with Risk-Averse Suppliers"および"Optimal Design of Scoring Auction"の改訂と国際学術雑誌への投稿である. 一つ目の論文では,公共調達において用いられている二種類の調達方式について,ゲーム理論によるモデルを構築した上で,各方式のパフォーマンスの比較分析を行っている.これらのプロジェクトは,設計,建設,運用といった複数のフェーズからなることが通常であり,調達主体は入札を分割すべきか一括して実施するかの選択に迫られる.この状況を反映し,理論モデルにおいて調達主体は,「一括方式」および「非一括方式」と呼ばれる二種類の調達方式を選択肢として持つ.このとき,均衡において調達主体の利得および社会厚生をより高める調達方式がどちらになるかについて,各種の外生変数に関する十分条件を導出している. 二つ目の論文では,「スコアリングオークション」と呼ばれる入札方式(日本では総合評価落札方式と呼ばれる)について分析を行っている.従来は,調達主体が調達対象(橋や道路)の品質を指定した後,参加業者が価格を入札して,最も低い価格を付けた業者が落札するというルールが通例であった.スコアリングオークションでは,参加業者は価格のみならず自らが保証する品質水準も同時に入札する.各業者の入札した価格と品質の組み合わせに対して,あらかじめアナウンスされた評価基準に基づいてスコアが付けられ,最も高いスコアを付けた業者が落札する.当論文の目的は,あらゆるメカニズムの中でスコアリングオークションが最も高い均衡利得を調達主体にもたらすか,もしもたらすのであれば如何なる評価基準を設計すべきか,を明らかにすることである.主要結果から,社会余剰から情報レントを差し引いた余剰が,品質属性間のある種の補完性を満たすならば,品質属性を補完的に評価する点数の付け方によって.調達主体にとっての最滴な結果を遂行できることが明らかになった.
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