2011 Fiscal Year Annual Research Report
主観的輪郭の知覚におけるヒステリシス : 内的揺らぎ関する実験的アプローチ
Project/Area Number |
11J56473
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中村 友昭 神戸大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 主観的輪郭 / 感覚間相互作用 / 色彩知覚 / 短期記憶 |
Research Abstract |
主観的輪郭やネオンカラー錯視は物理的にはないはずの形や色彩を主観的に知覚する現象で、解剖学的にはV2,V4などの視覚野の関連性が示唆されているが詳しい事はまだ分かっていない。実験心理学的な手法では主に境界知覚、奥行き知覚や輝度の知覚に関するアプローチが多くみられ、近年では選択的(焦点的)注意が主観的輪郭の知覚に重要な働きをしているなどと報告されている。しかしながら我々は分析するよりむしろ現象的に拡張する事で感覚的意識の輪郭を掴むことができると考え実験を進める事にした。特に感覚間相互作用、短期記憶の時間変化を例にとり、主体が能動的に解釈するみえに対しての現象的特性を評価していった。感覚間相互作用に関する実験では主観的な色彩輪郭知覚における聴覚刺激の影響を調査した。視覚刺激は通常の物理的色彩と主観的色彩を用い、聴覚刺激(周波数)に対する影響を調べた。結果、通常の物理的色彩刺激に関しては聴覚刺激の周波数と明度・彩度に関する相関は見られなかったが、主観的輪郭における色彩知覚に関しては彩度成分に関して相関がみられた。また短期記憶に関する時間特性を通常の色覚刺激と主観的輪郭における色彩で比較調査した。短期記憶に関しては物理的色彩との違いは認められなかったが、色彩短期記憶における彩度・明度の時間特性が異なるという結果が派生的に得られた。両実験ともに能動的知覚の現象的特性を知る手がかりを与えたという意味で積極的な成果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在ある程度の結果は出そろって来たものの、論文化するにあたり追加実験等を必要とする状況が発生し、論文作成の準備が遅れているため。追加実験を早急に進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
感覚間相互作用に関する実験をさらに詰めていきたい。その上で主観的輪郭のような物理的刺激の不在を能動的に補完する現象をさらに拡張し、新たな感覚間相互作用に関する現象を模索する。差し当たり物体運動とその不在を補完する機能としての聴覚の変調作用を実験的に調査することを予定している。
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