2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11J56682
|
Research Institution | Kinki University |
Research Fellow |
芦田 裕史 近畿大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 性分化 / Fox12 / Dmrt1 / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
申請者らはホンモロコの性分化に関与する4種の遺伝子(Fox12,Cyp19a,42Sp50,Dmrt1)を単離・同定することに成功した。しかし、遺伝子の発現開始時期・雌雄での遺伝子発現量の差異など、いまだ解明すべき点が多い。本研究の目的の一つである、温度依存型性決定様式(TSD)を持つホンモロコの性分化機構の解明には、さらなる性分化関連遺伝子の動向を解析することが必要である。そこで、本年は、本種における遺伝子発現についてのより詳細な知見を収集するため、TSDの影響のない20℃で飼育したホンモロコを用いて、詳細な発現部位と成長段階別の遺伝子発現動態を調べた。 まず、上記4種の遺伝子について、ホンモロコ成魚における詳細な各組織の発現を観察するため、雌雄各3尾ずつをRT-PCRを用いて発現解析を行った。その結果、雌性マーカー遺伝子であるFox12,Cyp19aは雌の卵巣での特に強い発現が見られたが、雌雄にかかわらず、目、鰓、脳、および鰾で発現が観察された。興味深いことに2遺伝子の筋肉中での発現は雌のみで観察され、雄の筋肉中では観察されなかった。さらに、もう1つの雌性マーカー遺伝子の42Sp50は卵巣のみで発現が観察された。雄性マーカー遺伝子のDmrt1は雄では精巣での発現が見られたほか、鰓、胆嚢、脾臓でも発現が観察され、雌では卵巣や眼球においてもわずかながら発現が観察された。既報の他魚種の結果から、Fox12,Cyp19a,Dmrt1は転写因子として機能しており、生殖巣以外でも発現が観察されているが、本種においても同様の機能を有するものと示唆された。 また、孵化後1日齢から30日齢までの様々な発育段階のホンモロコ仔稚魚をWhole mount in situ hybridization法(WISH)に供した。染色の結果からは孵化後10日齢の各配列特異的プローブで浮き袋下部、腸管上部に強いシグナルが観察された。これは本種の形態的性分化開始時期である孵化後20日齢より以前に、各遺伝子が発現していることを示唆している。 さらに、ホンモロコ仔稚魚において、性分化関連遺伝子の発現動態を調べるために、各発育段階の仔稚魚からtotal RNAの抽出とcDNAの合成を個体ごとに行った。その後、それぞれについて、各遺伝子特異的プライマーを使用し、ハウスキーピング遺伝子であるβ-actinを内在性コントロールとしてΔΔCTによるリアルタイムPCRを行った。その結果、Fox12は孵化後5日齢に、Cyp19aは7日齢に高い発現傾向が見られた。Fox12はアロマターゼ合成酵素遺伝子のCyp19aのレギュレーターとして知られており、この結果からも、ホンモロコにおいても同様にFox12がCyp19aを制御する転写因子であることが示唆されている。また卵母細胞の保護に寄与する42Sp50は50日齢に高い発現傾向が見られた。また、Dmrt1は雄の形態的性分化期である孵化後40日齢よりも早期の5日齢から7日齢に発現が高い傾向が見られた。これは他魚種における既報と同じくDmrt1か雄性分化初期に影響していることを示唆している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、来年度以降における性分化以前の時期での高温、低温刺激に対する遺伝子反応解析へ向けての標準となる知見として、環境温度の影響を受けない状態での性分化関連遺伝子マーカーの発現プロファイルを作成すべく、H22までにクローニングしたFox12、Dmrt1、Cyp19a、vasa、42Sp50の各マーカー遺伝子発現について調べている。実験区の設定、サンプリング、および初めて行う機器操作や分析方法の修得も、いずれも積極的に行えている。また、現在は論文投稿準備を進めているところである
|
Strategy for Future Research Activity |
性分化期における経験水温が、性比と遺伝子発現に与える影響を詳細に調査するため、これまでの研究で得られた遺伝子配列特異的なプライマーとRNAプローブを用いて遺伝子の発現解析を行う。すなわち、ホンモロコ仔稚魚を、性分化期間に低水温処理区(10℃)、高水温処理区(30℃)、雄性ホルモン処理区、対照区(20℃)でそれぞれ飼育する。仔稚魚は10日ごとに各試験区100尾ずつを固定し、Fox12、Cyp19a1、Dmrt1、sox9、vasa遺伝子の配列特異的プライマーを用いたリアルタイムPCRと、プローブを用いたin situ hybridizationによって発現解析を行う。その後、得られた知見より、ホンモロコの全雌生産に最適な条件・処理法を提案する。
|
Research Products
(3 results)