1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11NP0201
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮田 隆 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (20022692)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀 寛 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60116663)
五條堀 孝 国立遺伝学研究所, 教授 (50162136)
七田 芳則 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60127090)
倉谷 滋 岡山大学, 理学部, 教授 (00178089)
岡田 典弘 東京工業大学, 生命理工学部, 教授 (60132982)
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Keywords | 生物多様性 / 分子進化 / 形態進化 / 分子系統樹 / 遺伝子族 / 多細胞動物 |
Research Abstract |
本プロジェクトは、生物多様性の分子機構を解明するとともに、新しい分子進化学の構築を目的とする。各メンバーによって得られた主な成果は以下の通りである。 ◆「富田」動物特有の遺伝子族では脊椎動物の進化の初期に組織特異的遺伝子の多様化が起こるが、その時期を正確に推定するために、脊椎動物ナメクジウオ、最も原始的な脊椎動物である円口類、および軟骨魚類から多数の遺伝子を単離し、分子系統学的解析を行った。その結果、組織特異的遺伝子の多様化はおよそ5億年前に起きた有顎類と無顎類の分岐あたりで集中的に起きていたことが明らかになった。さらに、多細胞動物の遺伝子の起源を知る目的で、多細胞動物に最も近縁とされている立襟鞭毛虫からチロシンキナーゼ(TK)およびチロシンホスファターゼ(PTP)遺伝子のクローニングを試みた。これらの遺伝子は多細胞特有の遺伝子と考えられていたが、驚いたことに、単細胞生物である立襟鞭毛虫には多様なメンバーを持つTK族及びPTP族が既に存在しており、それらのメンバーのいくつかは多細胞動物の遺伝子と相同であることが明らかになった。この結果は、単細胞生物から多細胞動物が進化する過程で遺伝子の多様化がどう進んだかを理解する上で重要な情報を提供すると思われる。 ◆「阿形」脳をつくる遺伝子プログラムの解明のため、プラナリアOtx遺伝子群をRNAi法で遺伝子ノックアウトし、それらの遺伝子機能の解析に成功した。DjotxAをノックアウトしたものでは、視神経の形成異常を起こし、DjotxBとDjotpをノックアウトとしたものでは、脳神経細胞は形成されるも、その神経投射に異常が生じることが明らかとなった。これらの事実から、プラナリアにおいてOtx遺伝子群がすでに脳のパターン形成に不可欠な遺伝子としてすでに使われていることを明らかにした。 ◆「倉谷」脊椎動物の顎の進化にどのような発生プログラムの変更が関わっているのかを明らかにするため、顎を持たない脊椎動物の一種、カワヤツメにおける口の発生を様々な方法で比較した。顎を持つ顎口類もカワヤツメも、発生のある時期にはほとんど同じ胚の形態パターンが成立し,いくつかの制御遺伝子の発現パターンや、分節的原基の配列、細胞系譜などに共通性が見られる。本質的な違いが形態的に明瞭になるのはそののちである。詳細に胚形態を観察したところ、ヤツメウナギのロを構成する間葉
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細胞の分布と成長のパターンが、顎口類のものと比較不可能であることが分かった。また、顎には発現するが、それより前方では機能しないホメオボックス遺伝子の一つ、LIDIx116がヤツメウナギでは顎より前の領域に発現する。顎の進化はへテロトピーに基づく、相同遺伝子の遣い回しによるものと推測された。 ◆「七田」視覚機能の多様性のメカニズムを分子レベルで解析するため、本年度は以下の研究を行った。錐体視物質とロドプシンの性質を比較検討した結果、両者の違いは一つのアミノ酸の置換によって起こることが明らかになった。そこで、この違いが視細胞の応答特性とどのように連関しているかを検討するため、錐体視物質の性質を示すロドプシンの変異遺伝子をもつミュータントマウスを作製することを試みた。現在,キメラマウスの作製に成功し、この変異遺伝子のみを発現するホモマウスの作製を進めている。 ◆「岡田」アフリカ大陸のビクトリア湖、マラウイ湖、タンガニイカ湖には、これらの湖に固有のカワスズメ科魚類、シクリッドがそれぞれ数百種ずつ生息するが、湖の年代測定からこれら固有種が短期間に急速な種分化を起こしたことが示唆されている。本研究ではシクリッドから頭部、顎、及び歯の形態形成に関与すると思われるBMP4遺伝子のホモログを単離しその遺伝子の進化を検証した。その結果、BMP4では急速に種分化を起こしたシクリッドの系統でアミノ酸の進化速度が高くなっていることが明かとなった。このことから形態形成に関与する遺伝子は急速な種分化、種形成に伴う形態変化に関与してきたことが予想された。 ◆「堀」堀のグループが見つけたメダカのトランスポゾン(Tol-2と命名)は脊椎動物で最初の活性をもつトランスポゾンである。今年度はその内部遺伝子のトランスポゼースmRNAを試験管内で合成し、これをメダカ卵に注入し、その活性を得、さらに数量的に活性を測定することに成功した。 ◆「五条堀」遺伝子発現プロファイルの違いから生物多様性の分子機構を解明することを目的として、プラナリアの眼のESTの配列を決定し、遺伝子発現プロフィールを作成した。それをBODYMAPとして公開されているヒト、マウスの発現プロフィールと比較した。その結果,プラナリアの眼には冗長性を除いた全配列の約10%もの割合で神経系に関与する遺伝子が占めていること、一方、ヒトやマウスの眼に関与する組織では、それぞれ1.9%、2.9%程度でしかなかったことが明らかとなった。 Less
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Research Products
(11 results)
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[Publications] Suga,H.: "Protein tyrosine kinase cDNAs from amphioxus,hagfish and lamprey :Isoform duplications around the divergence of cyclostomes and gnathostomes."J.Mol.Evol.. 49. 601-608 (1999)
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[Publications] Ono-Koyanagi,K.: "Protein tyrosine phosphatases from amphioxus,hagfish and ray : Divergence of tissue-specific Isoform genes in the early evolution of vertebrates."J.Mol.Evol.. (in press). (2000)
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[Publications] Hatta,Y.: "HLA genes and haplotypes in Ryukyuan suggest a recent gene flow to the Okinawa islands."Human Biology.. 71(3). 353-365 (1999)
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[Publications] Onishi,A.: "Dichromatism in macaque monkeys."Nature. 402. 139-140 (1999)
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[Publications] Kandori,H.: "Local and distant protein structural changes upon photoisomerization of the retinal in bacteriorhodopsin."Proc.Natl.Acad,Sci.USA. (in press). (2000)
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[Publications] Koga,A.: "Amino acid sequence of a putative transposase protein of the medaka fish transposable element Tol2 deduced from mRNA nucleotide sequences."FEBS Lett.. 461(3). 295-298 (1999)
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[Publications] Koga,A.: "Evidence for recent invasion of the medaka fish geneme by the Tcl2 : transposable element."Genetics. (in press). (2000)
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[Publications] Nikaido,M.: "Phylogenetic relationships among cetartiodactyls based on insertions of short and long interspersed elements : Hippopomamuses are the closest extant relatives of whales."Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 96. 10261-10266 (1999)
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[Publications] Horigome,N.: "Development of cephalic neural crest cells in embryos of Lampetra japonica,with special reference to the evolution of the jaw. "Dev.Biol.. 207. 287-308 (1999)
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[Publications] Kuratani,S.: "Developmental morphology of the cephalic mesoderm and reevaluation of segmental theories of the vertebrate head : evidence from embryos of an agnathan vertebrate,Lampetra japonica."Dev.Biol.. 210. 381-400 (1999)
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[Publications] Tazaki,A.: "Neural network in planarian revealed by an antlbody against planarian synaptotagmin homologue"Biochem,Biophys.Res.Commun.. 260. 426-432 (1999)