2000 Fiscal Year Annual Research Report
人工ナノメートル空間中液相分子の高速分光法および反応ダイナミクス制御法の開発
Project/Area Number |
12042218
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北森 武彦 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (60214821)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
火原 彰秀 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (30312995)
渡慶次 学 (財)神奈川科学技術アカデミー, インテグレーテッドケミストリープロジェクト, 研究員 (60311437)
|
Keywords | 反応ダイナミクス / 顕微過渡レンズ分光法 / ナノメート空間 / 高速原子線法 / 石英ガラス / レーザー分光 / 多光子イオン化 / 水和電子 |
Research Abstract |
本研究では、溶液を特長づけるの最小構成単位と考えられているクラスターの反応ダイナミクス計測を光熱変換分光法とマイクロチップ技術の利点を活用して実現することを目指している。溶液クラスターの大きさの数倍から数百倍の大きさと考えられる10〜数100nmの微小空間に液体を閉じこめ、測定することより、通常の大きさでは困難なバルク液体との情報を分離することを着想した。 1.顕微過渡レンズ分光法の開発 液相の非蛍光分子の非発光過程を超高感度に測定できる手法として顕微過渡レンズ分光法を開発した。従来の過渡レンズ分光装置に、顕微鏡を導入し、微小空間測定できるよう改良した。光パルス幅拡がり・光量低下などの問題点があったが、逆分散プリズム対の導入や顕微鏡中透過光路の改造で解決した。 2.ナノ空間の作製 目的分子の分子・クラスタースケールでの物性を顕在化させる空間としてナノ空間をガラス基板上に作製した。東大院工畑村・中尾研究室の協力のもと、高速原子線加工装置により、500nmおよび150nmサイズの空間を作製できた。 3.反応ダイナミクスと空間サイズ効果 水分子の多光子励起反応ダイナミクス計測と空間サイズ効果を検討した。波長400nmの光パルスの三光子吸収による水分子の解離反応および再結合過程を微小空間中で測定した結果、500nm空間においてクラスター形成時間が、バルクと比較して4倍になることを見いだした。空間サイズが150nmでは、試料の熱容量が非常に小さいため計測に伴う発熱により乾燥する問題が発生した。今後改良が必要である。またこの空間中で蛍光分子の蛍光寿命を測定したところ、5μm、500nm、150nmの空間スケール順に寿命が短くなり、かつ多成分の緩和が観察された。このことは、メソ空間中の液体の溶媒再配向や回転などの状態が制限されていることを示しており、純水の測定と論理的に一致した傾向を示した。
|