2000 Fiscal Year Annual Research Report
σ-π相互作用をもつπ電子システムおよびそのカチオン種の設計と合成
Project/Area Number |
12042240
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小松 紘一 京都大学, 化学研究所, 教授 (70026243)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西長 亨 京都大学, 化学研究所, 助手 (30281108)
|
Keywords | ラジカルカチオン / X線結晶構造解析 / シグマーパイ共役 / ジチイン / 芳香族性 / ケイ素カチオン / シクロヘキサトリエン / 平面性COT |
Research Abstract |
1.完全にビシクロ[2.2.2]オクテン(BCOと略記)の縮環した一連のベンゼン系縮合芳香族炭化水素を合成して、これらを安定なラジカルカチオン塩に変換し、X線結晶構造解析によりそれらの詳細な構造決定に初めて成功した。結合長の比較により、ビシクロ骨格が顕著なσ-π共役によりカチオン種を安定化していることが明らかとなった。 2.2個のBCOユニットの縮環した1,2-および1,4-ジチインを合成し、これらが一電子酸化により安定なラジカルカチオン塩を与えること、また二電子酸化により芳香族性をもつ6π電子系ジカチオンに変換されることを明らかにした。 3.ケイ素上にメシチル基をもち3個のBCOユニットが縮環したシラトロピリウムイオンを、低温、溶液中で発生させることに初めて成功した。この陽イオンについて、Si-29NMRからケイ素カチオンとしての性質をもつこと、C-13NMRがら陽電荷は七員環に非局在していること、H-1NMRから6π電子系としての芳香族性をもつこと、などが明らかとなった。 4.BCOよりひずみの大きいビシクロ[2.1.1]ヘキセン(BCHと略記)の縮環したベンゼン1およびシクロオクタテトラエン(COT)2の効率的な合成法を開発し、これらの性質について詳細に検討した。ベンゼン1は理論計算によると芳香族性を保持しているものの大きな結合交替をもち、これを反映してオレフィンに特有の反応性を示した。すなわち酸化およびSimmons-Smith型の反応により、容易にトリエポキシドおよびトリシクロプロパン誘導体を与えた。一方、COT2はX線結晶構造解析の結果、初めての平面性不飽和八員環をもつ炭化水素であることが判明し、また、高いHOMOをもつことを反映して、容易にラジカルカチオンへと変換された。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] T.Nishinaga,Y.Izukawa,K.Komatsu: "The First Cyclic π-Conjugated Silylium Ion : The Silatropylium Ion Annelated with Rigid δ-Frameworks"The Journal of American Chemical Society. 122巻. 9312-9313 (2000)
-
[Publications] A.Matsuura,T.Nishinaga,K.Komatsu: "The Structural Studies on the Radical Cations of Benzene, Naphthalene, Biphenylene,and Anthracene Fully Annelated with Bicyclo[2.2.2]octene Frameworks"The Journal of American Chemical Society. 122巻. 10007-10016 (2000)
-
[Publications] A.Matsuura,K.Komatsu: "Efficient Synthesis of Benzene and Planar Cyclooctatetraene Fully Annelated with Bicyclo[2.1.1]hex-2-ene"The Journal of American Chemical Society. 123巻. 1768-1769 (2001)
-
[Publications] K.Komatsu,K.Fujiwara,Y.Murata: "The Fullerene Cross-Dimer C_<130> : Synthesis and Properties"Chemical Communications. 第17号. 1583-1584 (2000)
-
[Publications] K.Komatsu,K.Fujiwara,Y.Murata: "The Mechanochemical Synthesis and Properties of the Fullerene Trimer C_<180>"Chemistry Letters. 第9号. 1016-1017 (2000)
-
[Publications] K.Komatsu: "Cyclic π-Conjugated Systems Annelated with Bicyclo[2.2.2]octene : Synthesis, Structures, and Properties"Bulletin of the Chemical Society of Japan. 74巻(発表予定). (2001)