2000 Fiscal Year Annual Research Report
理論的アプローチによる遷移金属を含む生体内化学反応の機構解明
Project/Area Number |
12042285
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
佐藤 啓文 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助手 (70290905)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平田 文男 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 教授 (90218785)
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Keywords | 溶液内分子の電子状態 / 溶液内分子のNMR化学シフト / 極端条件下における化学反応 |
Research Abstract |
生理現象を分子レベルで理解することは、化学・物理学・生物学から哲学にまで渡る学際的な問題である。近年、蛋白質やDNAを高い機能性を持つ分子として捉え、物理化学的な立場から理解しようとする実験・理論両面からの様々な試みがなされている。 理論側に於ては古典力学で生体内分子をモデル化したシミュレーション手法による研究が盛んであるが、生体内反応には古典論的観点だけでは理解できないものも多い。光合成過程に於ける光化学反応・電荷移動などは量子化学的な観点が不可欠な典型的な例であろう。加えて、多くの生体内分子は水中で安定に存在し、機能発現しているのでこれらの効果を無視することができない。つまり、量子化学的観点と溶媒和効果の観点は、生体内反応の理解を深めるための重要な鍵であると言える。 以上の観点から、本年度は溶媒中の生体(大型)分子を取り扱うためのQM/MM法の開発を行うとともに、(1)量子化学的自由度と溶媒和効果の結合についての理解を深める、(2)生体内分子をプローブする上で、もっともポピュラーで有力な手法の一つである、NMR化学シフトを溶液内分子について非経験的に予測できる方法を開発した。 (1)基本的な分子の水和過程に伴う、電子構造・分子構造の変化や水和構造について調べた。その結果、直感的・古典的な水和の理解がしばしば破綻をきたし、本研究課題で用いる、RISM-SCF法による分子レベルの水和の取り扱いが、現象の理解の上で本質的に必要不可欠であることが分かった。 (2)今回開発した新しい方法が、温度や密度などの溶液の熱力学条件の変化に対して実験結果を正しく再現する極めて有効な方法であることが分かった。
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[Publications] Yuichi HARANO,Hirofumi SATO and Fumio HIRATA: "A Theoretical Study on a Diets-Alder Reaction in Ambient and Supercritical Water : Viewing Solvent Effects through Frontier Orbitals"Chem.Phys.. 258. 151-161 (2000)
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[Publications] Hirofumi SATO,Nobuyuki MATUBAYASI,Masaru NAKAHARA and Fumio HIRATA: "Which Carbon Oxide is More Soluble? Ab initio Study on Carbon Monoxide and Dioxide in Aqueous Solution"Chem.Phys.Lett.. 323. 257-262 (2000)
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[Publications] Takeshi YAMAZAKI,Hirofumi SATO and Fumio HIRATA: "NMR Chemical Shifts in Solution : A RISM-SCF Approach"Chem.Phys.Lett.. 325. 668-674 (2000)
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[Publications] Takakazu NAKABAYASHI,Hirofumi SATO,Fumio HIRATA and Nobuyuki NISHI: "Theoretical Study on the Structures and Energies of Acetic Acid Dimers in Aqueous Solution"J.Phys.Chem.A. 105. 245-250 (2001)
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[Publications] 佐藤啓文: "溶媒和効果の理論:電子状態理論と液体論の結合-量子力学と統計力学と酸・塩基-"化学と工業. 54. 47-51 (2001)
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[Publications] 木下正弘,岡本祐幸,平田文男: "蛋白質立体構造形成における溶媒効果"生物物理. 40. 374-378 (2000)