2001 Fiscal Year Annual Research Report
脊髄における神経可塑性モデル、アロディニアの発症機構
Project/Area Number |
12053263
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
伊藤 誠二 関西医科大学, 医学部, 教授 (80201325)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松村 伸治 関西医科大学, 医学部, 助手 (70276393)
芦高 恵美子 関西医科大学, 医学部, 講師 (50291802)
西澤 幹雄 関西医科大学, 医学部, 講師 (40192687)
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Keywords | 痛覚 / アロディニア / 脊髄スライス / 神経可塑性 / プロスタグランジン / アクロメリン酸 |
Research Abstract |
我々は、痛覚の伝達が一次求心性線維の入力、脊髄後角の神経細胞、層構造でどのように制御されているのか、なぜ触覚が痛覚として誤認されるのかという重要かつ基本的な問題を神経の可塑性に焦点をあてて研究を進めている。本年度は脊髄におけるカプサイシン非感受性経路のアロディニア誘発に関与する新規物質のクローニングと神経回路網の解析に焦点をあて、実験を行い以下の知見を得た。 1 ドクササコの主成分アクロメリン酸はカイニン酸の誘導体であり、髄腔内投与するとアロディニアを誘発するが、高濃度投与すると脱感作をしてPGF2αのアロディニアが生じなくなることをみいだした。この経路に特異的な分子を同定するために、アクロメリン酸で前処置を行ったマウスと対照マウスの腰髄からmRNAを抽出し、サブトラクション法を行った。その結果、15種類の既知の遺伝子と14種類の未知の遺伝子が単離された。我々は、個々の遺伝子の塩基配列全長の単離と脊髄でのmRNA発現の確認を行った。これと平行して、上記の遺伝子のアンチセンスオリゴを合成して、留置カテーテルを介して1週間髄腔内投与した後、PGF2αのアロディニアの抑制作用で遺伝子の機能解析を行った。いくつかのアンチセンスオリゴはPGF2αのアロディニアをの誘発を抑制した。現在、抗体を作製しており、次年度、新規遺伝子の局在を検討する予定である。 2 アクロメリン酸は脊髄の介在ニューロンを選択的に破壊することから、新規のアクロメリン酸受容体の存在が想定されている。合成したアクロメリン酸誘導体を動物に投与して、それ自体が持つアロディニア誘発能と脱感作によるPGF2αによるアロディニアの誘発抑制能から構造活性相関を検討し、カイニン酸と異なる生質を持つことが判明した。 3 脊髄スライスを用いて、アクロメリン酸誘導体の脊髄での[Ca^<2+>]i動態を検討している。その結果、アクロメリン酸誘導体はグルタミン酸に比べて、1,000倍4以上の[Ca^<2+>]i上昇能を有していた。しかしながら、グルタミン酸と同じ[Ca^<2+>]i上昇能を持つにもかかわらず、一酸化窒素合成能は非常に低い。 現在、アクロメリン酸は光学異性の炭素を有するので合成は容易でないが、その合成を行い、アクロメリン酸受容体の性格付けと単離同定を試みる予定である。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Minami, T.: "Characterization of the glutamatergic system for induction and maintenance of allodynia"Brain Res.. 895. 178-185 (2001)
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[Publications] Minami, T.: "Effects of Capsaicin Cream on Prostaglandin-induced Allodynia"Anesth.Analg.. 93. 419-423 (2001)
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[Publications] Minami, T.: "Characterization of EP receptor subtypes responsible for prostaglandin E_2-induced gain responses by use of EP_1 and EP_3 receptor knockout mice"Br.J.Pharmacol.. 133. 438-444 (2001)
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[Publications] Maruyama, R.: "Effects of amino acids on the amidation of polyaromatic carboxylic acids by bacillus cereus"Biosci.Biotechnol.Biochem.. 65. 1761-1765 (2001)
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[Publications] Ito, S.: "Central and peripheral roles of prostaglandins in pain and their interactions with novel neuropeptides nociceptin and nocistatin"Neuroscience Research. 41. 299-332 (2001)
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[Publications] Doi, Y.: "Central nociceptive role of prostacyclin (IP) receptor induced by peripheral inflammation"Neuro Report. 13. 93-96 (2002)
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[Publications] 伊藤誠二: "オピオイド治療 課題と新潮流 V. 痛みの最前線ノシセプチン関連(1)ノシスタチンの鎮痛作用"エルゼビア・サイエンス株式会社ミクス. 309 (2001)