2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12208013
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坂本 健作 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (50240685)
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Keywords | 遺伝学的アルゴリズム / 組み合わせ最適化問題 / タンパク質の分子進化 / 目的関数 / 交叉演算 |
Research Abstract |
コンピューター科学の分野では,生物の遺伝から啓発された「遺伝的アルゴリズム」が,複雑な組み合わせ最適化問題を解くための強力なツールになっており,交叉や突然変異が「解」の探索にどのように働くかが研究されている.本研究では,タンバク質の配列空間上の適応地形を探索する手法として用いることで,あるタンパク質から他のタンパク質に分子進化するときのルールを明らかにすることに向けた研究を行った.コンピューター科学の手法である.「遺伝的アルゴリズム」と分子生物学実験とは,元来異質のものである.本年度は,これらの間の「互換性」を確立することを主な目的とした.酵素変異体の活性は,目的関数に相当し,一時に多数の変異体の活性を数値化することが必要になる.ここでは,遺伝学的方法によって間接的に行う方法を検討した.すなわち,lacZ遺伝子中のアンバーコドンのサプレッションの効率を,個々の変異酵素の活性の指標とすることで,活性の数値化を行う.lacZの発現量は,コロニーの着色によってランク付けを行う.一方,「交叉演算」のための実験手法は,「DNAシャフリング」法を改変することによって開発し,組み換えの効率について検討を行った. 目的関数の数値化は,上記のサプレッション系によって効率よく行えることが明らかになった.活性の高い変異体を含むコロニーは濃い青に着色し,活性の低いものはコロニーの中央が少し青くなっているだけである.この写真は十分着色した後で撮影しているので,濃い青のものは全て同程度に青く見えるが,着色の経時変化を追うことで,細かくランク付けすることが可能である.また,青コロニーの割合は,本研究以前に行った予備的研究の結果と良く一致しており,確かに,期待する活性を持つ酵素の変異体の検出に成功している.一方,GFP遺伝子を用いた予備的実験から,開発した「交叉法」が,予期通りの効率で遺伝子間の組み換えを起こすことを確認した.
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[Publications] K.Sakamoto et al.: "Molecular computation by DNA hairpin formation"Science. 288. 1223-1226 (2000)
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[Publications] 坂本健作: "生体分子と計算"数理科学. 38巻. 54-60 (2000)
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[Publications] 坂本健作: "DNAコンピュータでNP完全問題を解く"bit. 32. 54-61 (2000)