2002 Fiscal Year Annual Research Report
トリインフルエンザウイルスのヒトへの伝播及び病原性獲得機構:人工ウイルスによる分子生物学的解析
Project/Area Number |
12307008
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河岡 義裕 東京大学, 医科学研究所, 教授 (70135838)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀本 泰介 東京大学, 医科学研究所, 助教授 (00222282)
喜田 宏 北海道大学, 獣医学研究科, 教授 (10109506)
|
Keywords | インフルエンザウイルス / リバース・ジェネティクス / 病原性 / H5N1 / 香港 / ヘマグルチニン / HA / 宿主域 |
Research Abstract |
1997年、香港でトリH5N1インフルエンザウイルスが18名のヒトに直接感染し、そのうち6名が死亡した。ヒトから分離されたH5N1ウイルスであるA/Hong Kong/483/97(HK483)株およびA/Hong Kong/486/97(HK486)株は、ニワトリに対して両株ともに全身感染を引き起こし100%の致死率を示したが、マウスに対する病原性は両株間で異なり、HK483のみが致死性を示した。我々は両株間のマウスに対する病原性の違いが、ウイルスポリメラーゼの1つであるPB2の627番目のアミノ酸の置換に由来することをリバース・ジェネティクス法によって明らかにした。 さらにインフルエンザウイルスがトリからヒトへ伝播するメカニズムを明らかにするためのモデルとして、ヒトのウイルスであるA/Memphis/8/88(H3N2)(Mem/88)株とカモのウイルスであるA/mallard/New York/6750/78(H2N2)(Mal/NY)株のリアソータントウイルスをリバース・ジェネティクス法により作製し、カモの腸管内での増殖を調べた。その結果、カモのウイルスであるMal/NYにヒトのウイルスであるMem/88のMあるいはNS遺伝子を組み合わせてウイルスを作出した場合、カモの腸管内で増殖できたのに対し、他のMem/88遺伝子をMal/NYに組み込んだ場合はウイルスが作出されないか、あるいはウイルスは作出されたもののカモの腸管内で増殖することができなかった。このことはウイルス表面糖蛋白質、ポリメラーゼあるいは核蛋白質遺伝子が、感染可能な宿主域を制限していることを示している。 以上の成績から、哺乳類に対するインフルエンザウイルスの病原性はひとつのアミノ酸の置換により左右されうること、ならびにウイルス遺伝子のリアソータントメントにより宿主域を超えてトリからヒトへ感染しうることが示された。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] Hatta M, Kawaoka Y.: "The continued pandemic threat posed by avian influenza viruses in Hong Kong"Trends Microbiol.. 10(7). 340-344 (2002)
-
[Publications] Hatta M, Halfmann P, Wells K, Kawaoka Y.: "Human influenza a viral genes responsible for the restriction of its replication in duck intestine"Virology. 295(2). 250-255 (2002)
-
[Publications] Ito T, Kobayashi Y, Morita T, Horimoto T, Kawaoka Y.: "Virulent influenza A viruses induce apoptosis in chickens"Virus Res.. 84(1-2). 27-35 (2002)
-
[Publications] Neumann G, Kawaoka Y.: "Synthesis of influenza virus : new impetus from an old enzyme, RNA polymerase I"Virus Res.. 82(1-2). 153-158 (2002)
-
[Publications] Neumann G, Whitt MA, Kawaoka Y.: "A decade after the generation of a negative-sense RNA virus from cloned cDNA-what have we learned?"J Gen Virol.. 83(Pt11). 2635-2662 (2002)
-
[Publications] Hatta M, Neumann G, Kawaoka Y.: "Reverse genetics approach towards understanding pathogenesis of H5N1 Hong Kong influenza A virus infection"Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci.. 356(1416). 1841-1843 (2001)