2003 Fiscal Year Annual Research Report
健常乳幼児と発達障害児における「心の理解」の発達と援助プログラムの開発
Project/Area Number |
12410033
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
長崎 勤 筑波大学, 心身障害学系, 助教授 (80172518)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮本 信也 筑波大学, 心身障害学系, 教授 (60251005)
池田 由紀江 筑波大学, 心身障害学系, 教授 (00015843)
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Keywords | 心の理解 / 発達障害児 / 他者意図理解 / 援助プログラム / 広汎性発達障害児 / ダウン症児 / 自閉症児 / ゲーム |
Research Abstract |
本研究では[研究I]の「心の理解」の発達機序についての解明と、[研究II]の「心の理解」の発達援助に大別して研究を行った。[研究I]では、0-1歳の取り上げ場面での、実験者による応答条件と非応答条件の比較検討を行った結果、「待つこと」は、15ヶ月以降、応答条件が非応答条件に比べ持続時間が長くなり、高次な手段に変換するようになり、1際半ばから他者意図の想定が明確になることが示された。また、1-2歳児における誤提示条件への応答の分析から、1歳半頃から「他者意図の気づき」の反応がみられ、その後、相手の反応に応じ伝達手段の変更を行い、2歳前半では大人の関わり方に左右されず、伝達手段を修正できた。2、3歳児の母子場面の心的状態語の表出を分析した結果、2歳では自己欲求に関する発話が中心であり、3歳では自己叙述が増加し、他者叙述も増加することが示され、自己から他者へ、欲求から叙述へという発達過程が考えられた。高機能自閉症児の「心の理解」の発達と談話の発達の関係を分析した結果、誤信念課題等の「心の理論」課題の通過群では、自分の過去経験についての語りは他者や自己の心的状態に言及することが多かったが、未通過群ではそれらが少なく、また未通過群は出来事を時系列的に並べず並列させていた。[研究II]では[研究I]の基礎研究を基に「『心の理解』発達援助プログラム(MAP)」を開発し、発達障害児に対し発達援助を行った。広汎性発達障害児およびダウン症児に対し、「宝探しゲーム」やおやつ場面を用いて他者の欲求意図理解と信念理解の発達を援助し、「心の理解」発達の効果を認めた。また、自閉症児に対し相談機関と通園先の保育所において、小集団の模倣遊びと鬼ごっこルーティンを用いた指導を行った結果、指導場面で役割の自発的遂行が可能になるとともに、保育所での遊び場面では他児への注目や模倣の増加が認められた。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 長崎 勤: "自律した個、関係における個:文脈の中の「障害」と「心」"教育心理学研究年報. 第39集. 118-124 (2000)
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[Publications] 長崎 勤: "心の発達・理解とコミュニケーション力-「信ずること・欲すること」の理解の発達と援助-"月刊「言語」大修館書店. 7月号. 58-64 (2000)
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[Publications] 長崎 勤, 山田明子, 亀山千春: "ダウン症児における「心の理解」の学習可能性の検討-工作の共同行為ルーティンによる「他者の欲求意図を尋ねる」ことの指導をとおして-"特殊教育学研究. 8巻3号. 11-20 (2000)
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[Publications] 吉井勘人, 長崎 勤: "自閉症児に対する相互的コミュニケーション指導-共同行為フォーマットと情動共有の成立を通して-"心身障害学研究. 26巻. 81-92 (2002)
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[Publications] 小野里美帆, 長崎 勤: "自閉症児に対する「指さし理解」の指導-「宝探しフォーマット」による指導と家庭課題を通して-"心身障害学研究. 27巻. 183-191 (2002)
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[Publications] 長崎 勤, 古澤頼雄, 藤田継道(編著): "臨床発達心理学概説-発達支援の理論と実際"ミネルヴァ書房. 327 (2002)