2003 Fiscal Year Annual Research Report
ポスト・ローマ期西ヨーロッパにおける行政・管理文書の総合的研究
Project/Area Number |
12410100
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
佐藤 彰一 名古屋大学, 大学院・文学研究科, 教授 (80131126)
|
Keywords | 西ゴート王国 / スレート文書 / サラマンカ / レリア・タイプ / ディエゴ・アルヴァロ・タイプ / 西ゴート書式集 / レカレッド / 売買文書 |
Research Abstract |
本年度の当初の予定は西ゴート期のスレート文書の分析と、アングロ・サクソン期のいわゆる部族別賦課簿(Tribal Hidage)の研究を進めるよていであったが、時間の制約もあり着手しえたのは西ゴート・スレート文書をめぐる先行研究のフォローと、問題点の検討であった。 多様な類型の記録がスレートに刻まれて土中に埋められていたが、その中で固有の意味での文書は、少なくともその幾つかに関しては西ゴート書式集に収録されている文書範例を踏襲していることが確認される。スレート文書はその大多数がサラマンカ州から出土していて、年代としては6世紀から8世紀が想定されている。そしてそれらは二つのグループに分類される。すなわち1)レリラ(Lerilla)・タイプで数が多く、後期古代の陶器片などと一緒に出土する。刻まれている文字の特徴は、I、VII、XIIIなどのローマ数字が多く見られることである。これに対して2)もう一つのグループはディエゴ・アルヴァロ・タイプと呼ばれるもので、草書体で書かれた記録が特徴的である。 これらのスレート板は、出土・発見の状況が必ずしも明らかになっていないが、1956年にディエゴ・アルヴァロで発見されたそれは、家屋の遺構から出土している。それは一通の売買文書の断片であり、その断片的な文言には6世紀末に西ゴート王国を統治した国王レカレッドの名前も見える。この種の記録は他にもあり、現時点での想定として、たとえばこれらの法律文書の類は証拠能力を具えた実務記録として利用された可能性を指摘しておきたい。
|
Research Products
(7 results)
-
[Publications] Shoichi SATO: "La fiscalite merovingienne avant le VIIIe siecle"Le medieviste devant ses sources, ed.C et T.Carozzi. 152-170 (2004)
-
[Publications] Shoichi SATO: "Texte de silence ou silence du texte : essai de deconstructiondes Historiarum Libri Decem de Gregoire de Tours"Journal of Studies for the Integrated Text Science. 1-1. 13-29 (2003)
-
[Publications] 佐藤彰一: "森洋編訳『サン・ドニ修道院長シュジェール』(書評)"史学雑誌. 112-12. 85-89 (2003)
-
[Publications] 佐藤彰一: "森本芳樹『中世農民の世界:甦るプリュム修道院所領明細帳』(書評)"西洋史学論集(九州). 41. 91-94 (2003)
-
[Publications] Shoichi SATO: "A propos de plaid judiciare pour la restitution du patrimoine Ecclesiastique de Narbonne en 782"Melanges offerts a SHIN-ICHI ICHIKAWA. 117-132 (2003)
-
[Publications] 佐藤彰一: "西ゴート期スレート文書の歴史的コンテクスト"「統合テクスト科学の構築」討議資料. 3. 1-8 (2003)
-
[Publications] 佐藤彰一: "歴史書を読む -『歴史十書』のテクスト科学-"山川出版社. 180 (2004)