2000 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子欠損および過剰発現マウスを用いたPACAPの生理機能の解析
Project/Area Number |
12470016
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
馬場 明道 大阪大学, 薬学研究科, 教授 (70107100)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 均 大阪大学, 薬学研究科, 講師 (30240849)
松田 敏夫 大阪大学, 薬学研究科, 教授 (00107103)
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Keywords | PACAP / 遺伝子改変マウス / 精神行動 / 好奇心 / 不安 / 神経細胞保護 / グルタミン酸 |
Research Abstract |
本研究は、これまでに作製したPACAP欠損マウスを含め3種類の遺伝子変異マウスを用いて、中枢機能の調節、神経細胞の増殖・分化および障害保護、膵臓インスリン分泌、その他の生理作用においてPACAPが果たす役割の作用機構等をin vivo、in vitroで明らかにすることにより、PACAPシグナルの生理・病態的意義を解明することを目的として実施し、これまでに以下の各知見を得た。 1.PACAPの脳機能に関する行動薬理学的解析 (1)PACAP欠損マウスは野生型対照マウスと比べて新規環境(オープンフィールド)における探索行動(自発運動)量が増大していた。(2)また本マウスは好奇心が増大し、不安が減少している可能性が示された。(3)抗精神病薬であるハロペリドールは、上記の各行動を野生型と同レベルまで抑制した。 これらの結果から、PACAPは精神行動の調節に関与する神経ペプチドであり、PACAPシグナルの機能低下は、精神行動の異常という表現型に結びつき、なんらかの精神疾患、感情障害の原因の一つである可能性が示唆された。PACAPが精神機能の調節に関与することを示す報告はこれまでになく、はじめての知見である。 2.神経細胞障害保護作用 申請者らは、実験的脳虚血時に海馬においてPACAP発現が増大することを見出している。そこでPACAPの神経保護機構について、培養神経細胞に対するグルタミン酸毒性をin vitro虚血様モデルとして検討した。その結果、グルタミン暴露によりPACAP発現が増大し、PACAP受容体アンタゴニストはグルタミンによる細胞死を増悪させることが明らかとなった。これらの結果は、PACAPが内在的な神経保護因子であることを示すものである考えられる。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Shintani, N.: "Desensitization, surface expression, and glycosylation of a functional, epitope-tagged type I PACAP(PAC_1) receptor"Biochim.Biophys.Acta. 1509. 195-202 (2000)
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[Publications] Hashimoto, H.: "Mice with markedly reduced PACAP(PAC_1)receptor expression by targeted deletion of the signal peptide"J.Neurochem.. 75・5. 1810-1817 (2000)
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[Publications] 橋本 均: "ニューロペプチドPACAP受容体の構造と機能"別冊・医学のあゆみ. 79-84 (2001)