2000 Fiscal Year Annual Research Report
富栄養浅海域における生態系の復元-人工干潟現地実験場での環境と生物の動態-
Project/Area Number |
12480167
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
矢持 進 大阪市立大学, 工学部, 助教授 (30315973)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
重松 孝昌 大阪市立大学, 工学部, 講師 (80206086)
角野 昇八 大阪市立大学, 工学部, 教授 (70047398)
小田 一紀 大阪市立大学, 工学部, 教授 (60047230)
江口 充 近畿大学, 農学部, 助教授 (40176764)
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Keywords | 人工干潟 / 底生動物 / バクテリア / 底質 / 酸素消費速度 / 地盤高変位 |
Research Abstract |
本研究では、大阪湾阪南2区整備事業の人工干潟造成に先立ち、当該海域に2000年5月に造成された幅80m、奥行き100mの人工干潟現地実験場(浚渫土部と浚渫土の上に厚さ1mで覆砂した部分より成る)において干潟と浅場の生物生息機能や水質浄化機能を明らかにすることを目的として、造成初期の底質、底生動物ならびにバクテリアフローラなどについて調査した。その結果、2000年6〜12月にかけての人工干潟の地盤高は潮上帯でやや低下し、砂泥の沖合への移動が認められたものの、干潟全体の変位は-6.1cmと小さかった。この場合、粒子の細かい泥分域よりも粒子の粗く重い砂分域で地盤変化が大きかったことから、地盤高の変化は干潟外への底土の流出よりも圧密沈下などに起因するものと考えられた。底質や底生動物については、干潟や浅場の造成に伴い好気的環境が創出されたことから底質の酸化還元電位がプラスの値をとる領域が増大し、底生動物の種類数や現存量はまだ充分に豊かとは言えないものの、覆砂部とりわけ潮位観測基準面(DL)下1-2mの水深帯で多数の小型底生動物が生息するようになった。大型底生動物(メガベントス)については造成後1ヶ月の間にガザミやイシガニなどがこの浅場に蝟集し、生活の場として利用するようになることがわかった。細菌群集の時空間的変動と底泥の酸素消費速度に関して特徴的であったのは、潮間帯底泥の硫酸還元細菌数であり、9月では6月の1/1000に減少した。硫酸還元細菌は偏性嫌気性であるので、これは、干潟の造成により極めて好気的な環境が水際に形成されたことを示す。9月の昼夜観測の結果、硫化物などによる化学的酸素消費速度(2.7mgO_2/m^2/h)に時間的な変化がなかったのに対し、生物的酸素消費速度(微生物群の呼吸活性)は、明け方に比べ夕方では40倍以上高い値を示した(いずれも満潮時)。これは、干潟の好気的呼吸活性が時間レベルで変動していることを示し、従来報告されたことのない新しい知見と言える。
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