2001 Fiscal Year Annual Research Report
進化論受容の社会的・文化的文脈にかんする学際的・比較研究
Project/Area Number |
12490020
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
阪上 孝 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (70047166)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹沢 泰子 京都大学, 人文科学研究所, 助教授 (70227015)
八木 紀一郎 京都大学, 経済学研究科, 教授 (30116511)
大東 祥孝 京都大学, 留学生センター, 教授 (90169053)
小林 博行 京都大学, 人文科学研究所, 助手 (00293952)
北垣 徹 京都大学, 人文科学研究所, 助手 (50283669)
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Keywords | 進化論 / ダーウィニズム / 社会生物学 / 優生学 / 人種 / ダーウィン / スペンサー / ラマルク |
Research Abstract |
1859年のダーウィン『種の起源』以降、この書物がもたらした衝撃は計り知れない。それはまず、種の不変を信じて分類に終始していた博物学を抜けだし、生存闘争や白然選択などの原理を基礎とする、生命にかんするダイナミックな理解をもたらす。しかしそれは自然科学の一理論にはとどまらない。ダーウィン進化論は一つの思考様式として、哲学・法学・政治学・経済学・杜会学・人類学といった人文・社会諸科学へも浸透し、新たな認識枠組を提供するのだ。またこの理論は制度的学問の枠組すら乗り越え、杜会ダーウィニズムとして、国家や杜会にかんする言説としても機能することになる。そしてさらには、神の摂理を説く宗教を打破して、既存の人間観・世界観をも揺さぶるだろう。本研究の主要な狙いは、進化論が杜会にもたらすこうした広大な衝撃を探ることにあった。そのためにこの研究は多様な学問領域の専門家たちから組織され、また対象となる地域もヨーロッパからアメリカ、中国、そして日本を含む。 研究を遂行していくなかで特に明らかになった点は、進化思想とは大いに多面性と揺らぎを孕むものだったということである。当時においてはダーウィンの他に、心理学や社会学を含む壮大な進化論体系を構築する同時代のスペンサーも大きな影響力をもっていた。またフランスのラマルクはダーウィンにおよそ半世紀先行して、獲得形質の遺伝や進化の内的な力という点を強調しつつ彼の進化論を展開している。さらには『種の起源』の作者はこの書のなかで、マルサスの『人口論』を引用しつつ、その政治経済学的発想に多くを負っていることはよく知られている。このように進化論はいくつかの思想が絡まって織りなされる錯綜した知の総体であり、そこで知はメタファやアナロジーを通して、異なる学問領域間で、また学問と政治・社会のあいだで往還運動を行う。このなかではときとして大きな誤解や逸脱も産まれており、それは進化論を受容する時期や地域によってさまざまなかたちをとる。本研究がとりわけ力を注いだのは、このような多様性を詳述することである。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 大東祥孝: "Dichotic Monitoring Testにおける注意と耳優位性の関係について"神経心理学. 16. 32-38 (2000)
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[Publications] 大東祥孝: "変質論と進化論"精神医学史研究. 3. 34-39 (2000)
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[Publications] 八木紀一郎: "オーストリア学派における自由主義の純化"土地制度史学. 171. 1-9 (2001)
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[Publications] 竹沢泰子: "人種言説とアメリカ人類学"綾部恒雄編『文化人類学のパイオニア』ミネルヴァ書房. (印刷中). (2002)
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[Publications] 北垣 徹: "万国博覧会と国際会議-サン=シモン主義による知の組織化"人文学報. 84. 23-57 (2001)
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[Publications] 小林博行: "1859年前後のゲーテ形態学"モルフォロギア. 22. 12-22 (2000)
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[Publications] 阪上 孝, 上野成利(編): "ダーウィン以降の人文・社会科学"京都大学人文科学研究所. 110 (2001)