2002 Fiscal Year Annual Research Report
中国朝鮮族の移住とエスニシティ:都市居住者に関する社会人類学的研究
Project/Area Number |
12571017
|
Research Institution | KOBE UNIVERSITY |
Principal Investigator |
佐々木 衞 神戸大学, 文学部, 教授 (60136398)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
聶 莉莉 東京女子大学, 現代文化学部, 教授 (00258493)
園田 茂人 中央大学, 文学部, 教授 (10206683)
伊藤 亜人 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (50012464)
|
Keywords | 朝鮮族 / 中国 / 朝鮮半島 / 移動 / トランスナショナル / 都市 / 階層分化 / 親族ネットワーク |
Research Abstract |
14年度の調査内容は、以下の項目にまとめることができる。 1,ソウルにおける中国人および中国朝鮮族の出稼ぎ型移動に関する実態調査 (1)支援組織の一つである会の活動に関する資料収集 (2)韓国における中国人移住者に関する調査(中国僑民協会)と中華学校(台湾系)に関する調査 2,朝鮮族自治州成立50周年記念事業に関する調査 3,青島における中国朝鮮族の運動会の活動と組織・運営に関する調査 4,北京に出稼ぎに出てきた家族の追跡調査 調査から得られた知見は、次のように整理できる。 (1)都市への移動は学歴・職歴が鍵になっている。大学卒業者もしくは軍隊経験者は、新しく企業を始めるにも文化的な資本を経済的な資本に転換している。これに対して、一般の地方出身者は、大して当てにならない絆に頼らざるを得ない。 (2)都市移動者の多くは雑業層に就く。高等中学校卒業者も多く、徒手空拳の人はいきなり大都会に出て就業することは難しい。 (3)移動先での「運動会」の挙行は、移住地にあらたな絆と凝集を構成する機会を提供している。 2,家族・親族の絆の再構成 (1)同郷・親族ネットワークが相互支援のために不可欠の役割を果たしている。 (2)誕生日や還暦の祝いに見られるように、家族における儒教的構成原理を状況主義的に再構成している。 3,エスニシティの構造 朝鮮族が「故郷」としての北朝鮮から自立的な立場を確立し、また、中国で生きる手段として中国語の習得を選択しているが、これらは「脱朝鮮族」の傾向を生んでいる。しかし他方では。朝鮮族であることが、韓国チャンネルとの接点を作り経済的な新たなチャンスとなっている。韓国にたいして「同胞」としての優遇を期待することも強くなっている。ストレートに韓国と一体化することにはならないが、中国朝鮮族としての自覚が高まっているとすれば、ここに一種の「再朝鮮族」を見ることもできよう。 平成15年度の研究は、中国商戦族のトランスナショナルな移動とエスニシティに関わる問題に発展させる計画である。
|