2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12610015
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
湯浅 邦弘 大阪大学, 文学研究科, 教授 (30182661)
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Keywords | 兵学思想 / 兵法 / 自然 / 兵陰陽 |
Research Abstract |
本年度は、関係資料の収集・分析に努めつつ、歴代史書に於て中華と夷狄との「接触」がどのように描写されているかを検討した。また主として、異民族との接触に深く関わる兵学上の呪術的・迷信的要素(当時としての認識は自然科学的要素)について検討し、次の諸点を明らかにすることができた。 1.敦煌文書『敦煌残巻占雲気書』に於ける「占雲気」の内容を分析し、その構造と思想的特色を明らかにした。『敦煌残巻占雲気書』には、独特の五行思想が見られ、他の類書との比較に於ても、兵書としての独自性を有することが明らかになった。 2.『漢書』芸文志が「兵陰陽」と総称する呪術的兵法に対して、『孫子』『呉子』など、他の主要な兵学がいかなる評価を加えているか、また、影響を受けているかという観点から改めて考察を加え、その結果を五つの類型としてまとめた。 3.上記のように、中国の兵学を俯瞰してみると、「合理」に徹した『孫子』『呉子』流の兵法は、むしろ突出した存在であり、時代と共に、むしろ「自然」を取り込む方向に展開していった状況を看取し得る。これは、中国思想を貫く最大の特質が、「天」と「人」との密接な関係を説く天人相関思想にあったこととも無縁ではない。またこのことは、中国が早熟な軍事と兵学の伝統を形成しながら、何故に「科学」的思考を発達させることができなかったのかについても、重要な示唆を与えており、今後の研究に大きな展望を開くこととなった。
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Research Products
(1 results)